表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

切腹

作者: 考えたい

「桜町同心、波野誠也に切腹を許し申し付けるものなり。」

 そう言われた自分は、三十余年の己の人生を振り返る。

 丹後国に生まれた波野誠也は十六の時桜町同心となった。それ以降大層手柄を挙げて幕府に奉公し申し上げてきたが、殺人犯の追跡途中に最後の最後で取り逃がした。

 其の殺人犯とは数十年にわたって手配書が各地に流れ、各奉行所が血眼になって探しているお尋ね者だ。だからか奉行の怒りはすさまじく、このように切腹を申し付けられた次第である。

 早速真っ白な死に装束を左前で纏い、どっしりと茣蓙敷の上で構える。

「辞世の言葉は何かあるか?」と奉行は訊いてくるが「無しッ!」と返し、勢いよく腹を切ろうとする。

 が、やはり自分の腹が刃に刺されるその一瞬の寸前に力を弱めてしまう。

 大丈夫、自分ならできる。

 再び恐怖を抑えて腕に力を入れる。指先の筋肉の一筋までをも意識して、力を入れる。

 刃先の感覚が服の繊維を切り始めたのを捉えると瞬間的に目を大きく見開く。

 しかし勢いそのまま刃はとどまるところを知らぬ。

 そのまま筋繊維が刃に裂かれる感覚が指先だけでなく正にその裂かれた腹の筋繊維の悲鳴まで届く。

 後は勢いに任せて横真一文字に己の腹を斬る。

 此処迄くればもう怖いものはない。縦にも一筋の斬り筋を入れる。

 意識が朦朧とし、自分の体を支えることすらままならなくなり、体のバランスが崩れ始めた。

 その瞬間介錯人が波野の頸を切り落とした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ