未知とミチミチに詰まった怒り〜プチトマトを枯らすものは魔王になれる〜
「『クイックロード』『ハードガンナー』」
メインに据えた《銃形》の補正で強化された2丁拳銃でもって、《収穫魔王》の眷属である植物を纏めて消し飛ばす。
が、次の瞬間にはまた別の攻撃を受け体が倒れる。
「『再度の屈辱』」
だが黄泉返りのスキルによって起き上がり、再度の銃撃によって周囲の植物を一掃する。
AGI、STR、思考速度など諸々にバフを掛ける丸薬を噛み砕き、一度の死亡によって途切れたバフを掛け直す。
「あ〜らあらあら??プリンさん?もう一乙って.....前より弱くなってないです??!」
さっき吹き飛ばしたばかりだというのに既に復活した肉食植物を挟んだ向こう、それらを操る
《収穫魔王》、PL名:ブリッジフェザーはいつも通りの様子で煽りを飛ばしてくる。
真っ白いセーラー服と揃えるように白い長髪と肌、唯一瞳だけが、その凶悪さの証左であるかのように血色の赤に染まっている。
「うっせぇ!俺は一機目は遊ぶんだよ」
という風に言葉を叩き返し再び地面を蹴り、憎きブリッジフェザーを蜂の巣にすべく攻撃を開始する。
酸を吐く、拘束する、鞭のようにしなり迫ってくる。
実に多様な攻撃手段を持つ植物群を見切り、一匹一匹丁寧に潰していく。
『発動条件達成:『偏執病』
『一度あれば二度はない』』
それぞれの一定時間の戦闘、同一戦闘内での死亡をトリガーとするスキルが発動し、俺とヤツの間に存在するどうしようもない力量差を少しだけ埋める。
加速する踏み込み。その少しの違いに、一瞬とはいえオート操作の植物共はついて来られない。
そうして_______
______「『クイックロード』『デビルズブレッド』!!」
「『斜陽の城壁』」
俺の持つ中で最大の倍率を持つ銃撃は、『収穫魔王』の持つ何でもないスキル一つで止められた。
「前回から二週間くらいだっけ?まぁ結構成長したわね」
「......クソが」
「相変わらずの連れない態度。そんなに私に負けたのが悔しかったの?」
「元はと言えばお前が初日にひっっっどいPKかましてきたのが原因だからな!?あの時数日くらいリアルでもお前が背後に立つとビビってたんだぞ。
それにお前構わないとめちゃくちゃし出すしな!」
「あー!それは言わないお約束でしょ?!私今《収穫魔王》なんですけど!」
「うっせ、お前が収穫できんのなんて精々命くらいだろ?この前だってプチトマト育てるとか言って枯らして..........」
と、そこまで言ったところで、俺は失敗を悟った。
「《役員特権/魔王:豊穣の収穫祭》ぉ!!!!」
顔真っ赤のブリッジフェザーが発動したのは、システムに認められた役員/魔王にだけ許された、環境掌握のスキル。
ただでさえ植物の多かったここ『植物園エリア』は、まばたきの間に食人植物の楽園と化した。
それを認識したと同時、俺は一瞬で死んだ。
「お疲れ様〜!!!!これに懲りずにまた殺されに来てね!バーカ!!!!」
「近いうちぜってー殺す.....」
最後にギリギリそれだけ言い残して、俺のアバターは光の粒子になって消えた。