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8、特訓

途中から、ミリアド視点に変わります。

「っうぁ!」


どがん、という音を立て、壁に激突する。

壁に激突した私は壁にぶつかった痛みを我慢しながらルージュさんに言われた通りに大銃を構える。


「アベリア、あたしの行動をよく見てから動け!」


「っ、はい!」


ルージュさんに言われた通りに構え、大銃に魔力を込め放つが、その全てをルージュさんは武器の大槌すら使わず、素手で叩き落とした。それを見て同様し一瞬動きが固まった私をルージュさんはすかさず私のお腹に蹴りを叩き込む。


「っいっっ!」


「こんな事で慌てるな! 防がれたとしてもすぐさま攻撃に移せ! 攻撃を防がれる事何て数多ある! この程度で動揺してたら身が持たないぞ!」


「っっはい!!」


何でこんな事になっているかと言うと、3時間前の事。





初めてのクエストでバードの討伐依頼を受注し、ミリアドさんとバードを倒しに行った時、ミリアドさんの手助けがあったけど結局バードを全て倒し切るのに3時間かかったし、何よりほぼほぼミリアドさんが倒したようなものだった。


だと言うのに、ミリアドさんは私がバードを1人で全て倒したような言い方をするから、自分1人でもバードに勝てるようにならなくちゃ、と2週間前にルージュさんに訓練をお願いしたのだ。ミリアドさんは訓練をお願いしても優しくしそうだったのでルージュさんにお願いした。


厳しくして訓練をつけてもらい、早く強くなりたい。直ぐには無理でもせめてミリアドさんの足を引っ張らないようにはなりたい。


というのが、冒頭部分の理由になります。


ルージュさんの訓練を受けて2週間になると言うのに、今だルージュさんに一撃を与えるどころか、近付く事さえ出来ない。でも最初の頃よりは少し素早さは上がっていると思う。あと、ただの魔力弾だったのが、今は魔力の質を変える事が出来るようになって、ただの打撃ダメージだけじゃ無くなった。


「アベリア! 1歩1歩が遅い! 的確な位置を定めてから撃て! 1回の攻撃をするのにどれだけの時間を取るつもりだ! 1回の攻撃に使う時間は3秒だ!」


「っ! はいっ!」


「返事が小さいっ!」


「はいっっ!!!」


正直に言えばきつい。

どれだけ体が悲鳴をあげようと決まった時間にならなきゃ終わりにならないし、体力が無い状態で叫ぶのが凄くきつい。だけど今は何とか体力が無くなっても意地で動く事が出来るようになった。無理な時は気絶しちゃうけど。でも直ぐにルージュさんに叩き起こされる。最初の頃は1時間ぐらいで動けなくなったし、胃のものが全部出てきたりしてたのと比べるとマシになった方だと思う。慣れって凄い。


それから1時間後、ルージュさんの訓練は終わって「お疲れー」って言って帰って行ったルージュさんと入れ代わるように、ミリアドさんが駆け寄って来た。


「お姉さん、僕の首に手を回して。出来る?」


ルージュさんが出ていったのと同時に崩れ落ちた私を、ミリアドさんは私を横抱きにして、私が無言でミリアドさんの首に手を回すと、それを合図かのようにミリアドさんは⦅宿屋⦆へと歩き出した。

最初の頃は汗臭いし汚いから、横抱きにされる事を拒んでいたが、ミリアドさんは問答無用で私を横抱きにして⦅宿屋⦆に連れて行かれた。抵抗する度に密着する面積が多くなっていくので、5回目ぐらいからは大人しく運ばれる事にした。

だって抵抗する度に密着する面積が多くなるし、じぃ、と見つめて来るようになるし、それどころか、口説くような甘い言葉をかけて来るようになるから…。

そうなるくらいなら、恥かしくても大人しくミリアドさんに横抱きにされている方がまだマシだという事に気づいた。


「それにしても、お姉さん。上達が早いね。」


「…え?」


「お姉さん、最初の頃は大銃を使う時凄いもたついていたけど、今はすんなりと大銃を使う事が出来るようになっているから凄く驚いたよ。」


「あ、ありがとうございます…」


ニコニコと嬉しそうな顔で笑うミリアドさんに何故か不安を覚えた。何か嫌な予感がする。


「やっぱりお姉さんは、可愛くて、でもカッコよくて、頑張り屋さんで、本当に…。」


にこり、と笑って私の耳元で「美しいね。」と呟いた。

その声がいつもより少し低くて、どこか甘さを感じて、私は意識を飛ばした。これは私悪くないと思う。











「あれ、お姉さん? あらら。お姉さん、また気絶してる。本当にお姉さんは可愛いなぁ。」


僕の腕の中で気絶してるお姉さんが可愛くて、思わず「ふふ。」と笑う。


褒められる事に慣れてなくて、少しでも褒めると恥ずかしそうにするけど、嬉しそうに微笑む所が可愛い。

褒め過ぎたり、過度な愛情表現をしたりすると、恥ずかしさのあまり気絶しちゃうところも可愛い。


どんなに怖くても、自分より相手の事を優先させられるところがカッコイイ。

誰かの為に動く事の出来るところもカッコイイ。

そして、怖くても辛くても苦しくても前を見て、前に進もうとするその生き様が、何よりも美しい。


「ふふ。」


あの王族達は見る目が無いんだね。こんな可愛らしく美しい子をただの道具としか見てないなんて。


確かにこの子は全属性を持っているし、素質も普通の人よりは高い。

だけどこの子以上に素質が高い子なんて山程いるし、何なら鍛え方次第で、素質の高さなんて上がるし、素質の高さなんて気にならなくなるぐらい強くなる。

それに全属性を持っていたって、全属性を持っているおかげで強くなるのにかなり時間がかかったりするから、属性を一個か二個しか持っていない人の方が強い場合が多い。

鍛え方次第でそれらは左右される。


あの王族達のやっている事は、お姉さんや他の人達の素質を高さを自ら落とさせている。


それともあれなのかな?

強い王族の子を産ませられればいいや、って感じなのかな?

強い王族の子を産ませるまで逃げられたくないから、わざと、そうしているのかな?


そうなのだとしたら本当にあの王族達は穢れているね。もういっその事あの王族達を消してしまおうか。それとも奴隷にしてどこかに売ってしまおうか。


あぁ、でも駄目だ。お姉さんが怒らないでって言っていたし、何よりお姉さんが王族達に復讐出来なくなってしまう。僕だけがスッキリするのは駄目だしね。


それにしてもあの王族達を、王族、って言うの、何か他の国の王族達に失礼な気がするから、この国の王族は一族達って呼び方にしよう。


そういえばこの間、フィーがあの一族達が動き出したって言ってたっけ。お姉さんを連れ戻そうと必死だね。

本当、失敗に失敗を重ねたよね、あの一族。

お姉さんは、恩の為にどれだけ辛く苦しい思いをしていても恩を返すために我慢していた子なのだから、沢山とは言わなくても、ちょっとずつでもお姉さんに恩を与えていれば、お姉さんはその恩を返すために王国に尽くしただろうにね。逃げる、何て思わないぐらいに。


それにあの一族の王子も馬鹿だね。気に入らないからと言う理由で、お姉さんを追放した事。そんなに平民と婚約したくなかったんだね、お姉さんを大事にしていれば絶対的地位を手に入れられたのに。だってお姉さんが産む子供は、他の婚約者達が産む子供よりも強さが桁外れなんだから。

まぁでも、あの一族の王子が馬鹿でいてくれたおかげで、僕はお姉さんに会えたし、お姉さんと一緒にいられるようになれたから、一応は感謝…かな?


考え事をしていたらいつの間にか⦅宿屋⦆に着いていて、中に入るとリリアンゼが出迎えてくれた。


「ミリアドとアベリア、おかえりぃ〜。」


「うん、ただいま。」


「アベリアは、おねむ?」


「うん。少し褒めすぎたみたい。」


「ありゃりゃぁ。」


リリアンゼは愛おしそうにお姉さんを見て、1、2回頭を撫でた後、僕を見て、すぅ、と目を細め、僕が僅かに聞こえる程度の声で言った。


「ミリアド、「奥で待つ」だって。」


「………」


「そこは溜め息を吐いてもいいと思うよ?」


「いや、ここまで来ると、もう溜め息すらも出ないよ。」


「同感。んじゃ、行っといで。アベリアはわたしに任せて」


「凄く心配なんだけど…」


「大丈夫! 襲わないよ!」


「襲う、何て一言も言ってないのによく出てきたね? その言葉。」


「…………。」


急に真顔になって、黙りながら僕を見るリリアンゼ。

リリアンゼにお姉さんを預けるのは凄く不安だけど、早く行かないとあの人は時間があまりないから直ぐ帰ってしまう。


渋々溜め息を吐きながらお姉さんを、リリアンゼに横抱きにさせると、いつもつまらなさそうにしている真顔のリリアンゼが、満面な笑みで嬉しそうに笑った。


凄い不安。何かしそう。


「リリアンゼ。」


「分かってる分かってる。何もしないよ? 早く行きな? 行ってらっしゃい♪」


「直ぐに帰ってくるからね。」


「え〜…」


リリアンゼの不満そうな声をスルーし、⦅宿屋⦆にある奥へ進もうとすると、「あ、待って」リリアンゼが止めてきたのでリリアンゼの方を振り向くと、リリアンゼが思い出したような顔で「これからは、リリアンゼって、呼ぶの?」と聞いてきたので、それに「うん。」と頷いた。


「おっけー。じゃあ私もこれからはミリアドって呼んだ方がいいよね? あれからミリアドって呼んでたけどー。」


「うん、そうしてくれると嬉しいな。」


「はぁい。じゃあこれからはそう呼ぶ事にするね〜」


⦅宿屋⦆にある奥へと行く為の扉を開け、進もうとすると、後ろからリリアンゼが「頑張んなねー、…ミリ(・・)。」と声をかけてきた。それに振り向くとリリアンゼがイタズラが成功したような顔で笑っていた。


「…ふふ。行ってくるね、…アンゼ(・・・)


リリアンゼに微笑み(・・・)、奥へと続く道を歩いて行った。




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