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7、初戦闘

「きぃぇぇぇぇぇぇっ!」


「っひ!」


ぎゅぃん、と音を立てて、私の真横をバードが通り過ぎて行き、バードの通った所には深い溝が出来ている。


バードは主に体当たりをしてきて、偶に魔法を使う。なので体当たりの威力が凄まじく、バードの体当たりが当たれば、骨の五〜六本は折れる。怖い事に、⦅Cランク⦆の冒険者でこの位のダメージを負うらしい。


「お姉さん。大銃に魔力を込めて、放って見て。」


「っはい!」


ミリアドさんの言われた通り、大銃に魔力を込めて放つ。

それを五〜八発放てば、打ったうち三発がバードに当たり、キレて体当たりをしてきたバードを避けて、また何発か魔力弾を放つ。


今のはただの魔力の塊なので打撲のダメージしか与えられて無いが、魔力を炎の属性に変えることが出来たら、バードに炎ダメージを与える事が出来る。だけど、今の私にはまだ無理なので、大人しく魔力弾で戦う。


「お姉さん、よく見て。バードは一定の行動を繰り返しているよ。」


私の後ろ、全体を見渡せる位置にミリアドさんは立っていて、私にアドバイスをくれる。だからと言って、気を抜いているわけでも無く、静かに警戒しながら私に手助けをくれている。


でも、呆れてしまわないだろうか? 先程から私はミリアドさんに手助けされてばかりだ。


今まで戦闘なんてやった事が無いと言っても、流石に私は覚えが悪すぎる。このままじゃ、ミリアドさんに見放されてしまうかもしれない。


「きぃぃぃっ!」


「お姉さんっ!」


「っぁ…」


戦闘中なのに関わらず余計な事を考えてしまい、反応が少し遅れてしまった。そのせいで体当たりをしてきたバードが目の前にいる。あと数秒したら、バードの体当たりが直撃するだろう。

他の冒険者さんとは違い、私は弱いから骨、五〜六本じゃ済まない気がする。また、ミリアドさんに迷惑をかけてしまう。今度こそ、ミリアドさんに見捨てられるかもしれない。


「《雷来》!」


ミリアドさんが叫んだと同時に、目の前にいるバード目掛けて雷が落ちて、バードは断末魔を上げ絶命した。


「お姉さん、大丈夫っ!?」


目の前からバードがいなくなった事に安心して、へたり込んでしまった。ミリアドさんはバードにも目をくれずに、私の傍に駆け寄って来てくれた。


死の恐怖には解放されたけど、今度は、ミリアドさんに呆れられ、見放される恐怖が、じわじわと浮き出てきた。

あんな失態を犯したんだから見放されるだろう。見放されなかったとしても、きっとこれからは前みたいに接してはくれないだろう。


ミリアドさんが私の肩に手を置いた。


きっと今から言われるんだ…っ、「お前はいらない。失望した。」って…っ。


「お姉さん…。」


ミリアドさんは困ったように笑いながら私の頬に手を当て、私はそれに体を震わせる。


言わないで…っ! 次からはちゃんとするからっ! 今度は失敗しないからっ! もう一度だけ、チャンスを下さい…っ。


「ご、めんなさい…っ! ごめんなさいっ! 次からはちゃんとするからっ! 今度は失敗しないからっ、見放さないで…っ、嫌いにならないでぇ…」


「…え?」


叫びに近い私の懇願に、ミリアドさんは目を見開いて驚いた顔をして、どこか安心したような顔で笑った。


「よかった…。」


何が良かったのだろう? 私という荷物が減るから「良かった」なの…?


ミリアドさんを伺うように見ると、ミリアドさんは私を抱き締め、大事なものを触るように優しく頭を撫でた。時折、ポンポン、と優しく背中を叩く。


「お姉さんが無事で良かった…。」


掠れた声でそう言われ、先程まで自分が正気では無かったことに気づいた。ミリアドさんが、王宮の人達のようなことを言う訳無いのに、私はミリアドさんも言うんだろうなと思ってしまった。

恩人になんて事を思ってしまっていたのだろう。


「あ、あの…」


「僕はお姉さんを見放さないよ。むしろ、お姉さんを逃がす事が出来なくてごめんね。」


「え……?」


「お姉さん、薄々感ずいているでしょ?」


「……っ、な、何、を…?」


「僕が…、普通じゃないって、外見通りの歳じゃないって事。」


「ぁ……っ!」


確かに私は最初ミリアドさんを見た時、性格が外見通りじゃないって思った。だって幼い外見に対し、性格が凄く落ち着いているから。


「この際だから言っちゃうね、僕の秘密。秘密を知れば僕は逃がすつもりはないし、お姉さんも、見放されるって怯えなくていいでしょう?」


そうすれば私は怯えなくていい。ミリアドさんの事だからきっと私が秘密を知ったら、ミリアドさんしか要らなくなるぐらい私を甘やかして、私を一番に考えると思う。

そうすれば私は怯える事は無くなって安心出来るだろう。


だとしても私は……。


「僕はね、」


「待ってっ!」


口を開こうとするミリアドさんの口を手で抑える。

びっくりした顔をするミリアドさんに少し笑みが浮かんだ。

ミリアドさんの驚いた顔は、いつものミリアドさんからは想像出来ない。いつもは何をやっても笑みを浮かべながらのミリアドさんしか見ていなかったから、驚いたりする表情を見ると何故だか嬉しい。


「秘密を教えてくれなくていいです…。これは私が乗り越えるべきものだから。」


だからこそ、ミリアドさんを縛り付けるような事はしたくない。


「ここで甘えてしまうと私はきっとこれからもミリアドさんに甘えてしまって、一人じゃ何も出来なくなってしまいます。」


「いいの?」


「はいっ、ミリアドさんが本当に言いたくなった時に言ってください。どんな事であろうと受け止められるよう、頑張りますから!」


「必ず、じゃなくて、受け止められるよう頑張る、なんだね。」


「必ず受け止めるなんて無理ですよ。確証がないことを言ってぬか喜びさせるなんて事はしたくないです…!」


「やっぱ、お姉さんはいい子だね。……うん、分かったよ。その時になったらお姉さんに教えるね。」


「はいっ! よろしくお願いしますっ」


ミリアドさんに指し伸ばされた手を取る。ミリアドさんのいつもとは少し違うその嬉しそうに笑みに、私も嬉しくなって笑う。


「もう少しやったら、街に帰ろうか。バード、あと4匹だから頑張ろうね。」


「はいっ、時間はかかりそうですが、頑張りますっ!」


その後、3時間ぐらいかけて残りのバード4匹を倒し、ほんのちょっとだけミリアドさんに戦い方を学んでから、冒険者ギルドに解決した依頼書を提出してから、リリちゃんの待つ⦅宿屋⦆に向かった。

⦅宿屋⦆に着いたあとは、リリちゃんのお色気攻撃が始まり、ミリアドさんに助けて貰うことになった。



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