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4、王族の秘密

フィールロッテ視点があります。

「ん〜、やっぱ当たってたかぁー。」


目の前にある書類を読み、ふぅ…、と息を吐く。

薄々感じてた嫌な予感が的中した。


王族達がやっている〘奴隷制度〙と〘実験体探し〙


〘実験体探し〙はまだ実行されていないからまだいいものの、問題はこっち、〘奴隷制度〙の方だ。


前々から耳に入ってきた噂だ。

ローブル王国を強くするために王族達が、強い能力を持つ者を手元に置き、その者達と子を成し、その子共達同士にも子を成させ、国内に能力の高い者達がいなければ、国外の国から能力の高い奴隷を買う。


数年前に急に耳に入ってきた噂だったから、有り得ない、と一蹴してしまっていたが、その被害にあっている者が身近にいるなんて…。ミリくんが拾って来るなんて思いもしなかったよ…。


この国は奴隷を買うことも売ることも禁止されている。

〘奴隷禁止法〙と言うもので、この国で奴隷を買ったり売ったりするのは勿論、奴隷にすることも禁止されていて、それを破れば、牢獄行き。下手すれば死刑。

それほど重く、国で定められている法なので誰も破らない。


だと言うのにそれを、その法を定めたもの達が率先して破っている。それどころか、かつてあった〘奴隷制度〙を作り直そうとし、その奴隷達で実験をしようとしている。

今は、能力の高い孤児達を集めて子を産ませる事だけにしているみたいだけど。


もし王族のやろうとしている事が全て整ってしまったら、特段能力の高いもの達は強い王族の子を産ませる為の道具として。普通の子達は、王族が強くなるための実験体になるだろう。

それはなんとしても阻止しなければいけない。


それにしてもやべぇ秘密を知っちゃった気がするが、ミリくんに頼まれたんじゃ断る事は出来ないし、どっちにしろ関わる事になるのなら最初から手を貸して、バレないように動いた方がいいし。


「あー、めんどくさ…。」


にしても毎回毎回、ミリくんはほんっとーに面倒臭いこと持ってきてくれるよね。

まぁでも、だから…


「退屈しなくて面白いんだけど。」


にしてもあのミリくんが保護という形であれ、誰かを連れてくるなんて久しぶりじゃない?


なんて言ったっけ、あの黒髪に灰色の目のお嬢さん。


えーと、アベリア…? だっけ。まぁ名前なんていいか。


見たところ、ミリくんは、あの秘密をあのお嬢さんに話していないのだろうな。あのお嬢さんがミリくんの秘密を知った時が見物だ。

秘密を知ってもミリくんのそばにいるのか、それとも、怖いと逃げて行くのか…。


あぁそろそろ時間だな。

ミリくんはかなりの量を食べるから、ミリくんに付き合って食べていたらあのお嬢さん、食べすぎで死んじゃうかもしれないし…。


ミリくん、あの話しをしていてくれているかなー?










「………」

(気持ち悪い…。)

油っこいものを沢山食べすぎて胃がモヤモヤする。後単純に胃に食べ物を詰め込み過ぎて胃から色々とはみ出て、胃から出てきそうになって、本当に何かが出てきそうな程吐き気が凄い。


だからといって、私を助けてくれたミリアドさんの言うことを拒絶するのは嫌。でも色々とキツい。


「これ、遅かったやつだわ。」


色々とキツくて、今も尚食べ続けているミリアドさんの目の前で、テーブルに突っ伏していると、斜め上から声が聞こえた。多分、ギルド長さんだ。


食べ物を胃に詰め込み過ぎたせいで、吐き気や頭痛が酷くなってきた私は動くことが出来ず、失礼だと思いながらも突っ伏した状態のまま斜め上を見上げれば、ギルド長さんが丸い水晶のようなものと、茶色い10cm程の板のようなものを持って、こちらへ歩いて来ていた。


ギルド長さんは、私の突っ伏したまま見上げる、という態度にも怒らず、むしろ、「頑張ったな…」という同情した眼差しを向けられ、逆にこっちが困惑することになった。

きっとギルド長さんは、ミリアドさんの大食いを知っているんだろう。じゃなきゃ、こんなに同情した眼差しを向けない。あんな小さな体のどこにあの量が入っていくのだろうか。


今も尚、食べて、注文して、を繰り返しているミリアドさんを見て、ギルド長さんは顔を青くして口を抑えた姿を見るに、きっとギルド長さんも私と同じ目にあった事があるんだろう。


ミリアドさんの方を見ずに肩だけを叩くギルド長さんを見るとよっぽど酷い目にあったのだと想像出来た。


ギルド長さんに肩を叩かれて、ようやくミリアドさんは正気に返り、食べ続けるのをやめてくれた。けど口はモグモグしているし、食べ足りなさそうにこちらをチラチラと見てきたので、私は顔を思いっきりを逸らした。隣ではギルド長さんも顔を逸らしていたのでギルド長さんも同じ気持ちなのだろう。それが初めて、ギルド長さんと私の心が一致した瞬間だった。


暫くしてミリアドさんが全ての料理を食べ終わり店員さんが食器を下げてテーブルが広くなると、ギルド長さんがミリアドさんの隣に座り、テーブルに何かを置いた。それを素早くミリアドさんが手に取って読み初め、ベチン、と音を立ててそれをテーブルに叩きつけたのを見て驚いた。


ミリアドさんは幼い見た目に対し中身が落ち着いてるので、そういう事はしないだろうな、と思ってたせいで、その行動に驚いたのと同時に、「子供らしいとこがあるっ!」 って嬉しくなった。

直ぐにそんな事ないと、思い知らせられるけど。


「うん。フィー、ありがとう。よく分かったよ。」


「そう? なら、良かった。」


「王家に色々と消えて欲しいと言うことが。」


「よくなかったわ。」


笑顔で繰り返されるその会話に着いて行くことは出来なかったけど、何かやばい、という事だけは分かった。むしろそれを感じ取れただけでもいい方だと思う。


ミリアドさんは、何か怖い雰囲気を醸し出し、上着のポケットから何かを出そうとしていて、ギルド長さんは、そんなミリアドさんを抑え込み、必死にミリアドさんを宥めている。流石に、王族に喧嘩を売ろうとしているミリアドさんを危ない…と思ったのだろう。しまいにゃ、拘束具が出てきたりし始めた。


「ちょーぉっと、落ち着こう? いい子だから。」


「何故?」


「王家に喧嘩を売るなんてやめて? 色々と大変だから。」


「へぇ、そう。」


「だぁぁー、こっちの気も知らないで!! ねぇ、お嬢さんからも言って!」


「…えっ!?」


ついに、私にもその矛先が向いた。

ギルド長さんは、私がミリアドさんの制御を出来ると思っているのだろうか。ギルド長さん曰く、この怒りは私を思っての事だから大丈夫だと言うが…。

一応やっては見るが、上手くはいかないだろう。


「あ、あの…、ミリアドさん…? えっと…、怒らないで欲しいな…?」


「うーん…、お姉さんがそう言うなら…。でも怒りは収まらないよ…。ちゃんと隠すから、王家へ怒る事だけはしていてもいい?」


「え…、あ、い、いいですよ…?」


「わぁい。」


やってみるが吉。本当にその通りだ。

目の前には機嫌を治し、ニコニコと嬉しそうに笑うミリアドさん。ミリアドさんを止められたけれど、なんか失敗した気がするのは何でだろう。

それは気のせいだと思いたい。


機嫌を治しているミリアドさんの横で、ギルド長さんが何か落ち込んでいるけど、ミリアドさんはそれに気にすることなくテーブルに置かれていた書類を私に見せてくれた。


そこに書かれていたのは、王族達の秘密。

私以外にも、同じ目にあっている人がいたのだ、同じ酷い扱いを受ける人が。中には私より酷い扱いを受けている人がいて、それを見て私の中にあった王様に対する、辛うじて残っていた恩という気持ちが無くなった。


今、やっと目が覚めた。

あの時、王子様に婚約破棄されて良かった。追放されて良かった。ミリアドさんに会えて良かった。


追放されてからも、王族に対して辛うじて残っていた情も、今完全に消えた。不思議と情が無くなると、面白いぐらい王族の可笑しいところに気づけるようになった。

今までやっぱり情が邪魔していたようだ。


「お、吹っ切れたね、お嬢さん。」


「お姉さん、僕達にどうして欲しい?」


一瞬言っていいのか迷ったけど、ミリアドさんの、言ってもいいよ、というように笑う表情につい口を滑らせてしまった。と言っても、私の思いなんて気づいていそうだけど


「…お、同じように酷い目にあってる人達を…、助けて欲しい…です!」


「ふふ、了解。」


「まぁ、こうなる事は知ってた。でも、助けるには少し時間が必要だけど。」


「色々と準備しないといけないからね。という事で…」


「お嬢さん、この水晶に手を翳して見て。」


そう言って目の前に置かれたのは丸い透明な水晶玉。

言われた通りに水晶玉に手を翳すと水晶玉が虹色に光り、ギルド長さんが持っていた茶色い10cm程板にゴリゴリと一人でに文字が刻まれて行く。


それを驚いて見ていると「はい」と渡されたそれに、さらに困惑した。固まる私にギルド長さんは、板を指差して「冒険証」と一言だけ言って、水晶玉を持ってどこかへ去って行ったので、代わりにミリアドさんが説明してくれた。


「この冒険証は、身分証のようなものなんだ。これがあれば他の国に見せるだけで入れるよ。」


それを、凄いな、と思って聞いていれば、冒険者ギルドについて教えてくれた。


「冒険者ギルドはね。国が作り上げたものではなくて、民間人が作り上げたものなんだ。モンスターの被害にあっても動かない国に呆れて全ての国の民間人達がお金を出し合い作った。だから国でも無闇に冒険者ギルドには手を出せないし、出したとしても理由はちゃんとしていなかったら、信頼を損なわれるのはそっちなんだよ。」


「……?」


「だって、やっている事は、お金を庶民から意味もなく巻き上げているのと同じだからね。」


そりゃあそうか。民間人か手を合わせ作り上げたものなのに国が好き勝手できるのは可笑しい。モンスター被害にあっても動かない国に呆れて作り上げたのに、今頃大丈夫だからそれはもう必要ない、って言われても信じられない。


「お城では、冒険者ギルドについて詳しく教えてもらえなかったので、知りませんでした…」


「知ったら冒険者になっちゃうと思ったのかもね。国は冒険者に無理に手を出せないから。」


「冒険者って、凄いですね…!」


「うん。だから、何かから逃げようとしている時はとりあえず、冒険者になったらいいよ。その何かから大抵逃げれる。流石に犯罪を犯して逃げているやつは冒険者になれないし、なったとしても捕まるけどね。でも、ランクが高ければ高いほど発言力はあるよ。」


ふふ、と笑うミリアドさんを見て気づいた。だからミリアドさんとギルド長さんは、私の冒険証を直ぐに作ってくれたんだ。国が私を無理やり連れていく事が出来ないように。


その事実にまた泣きそうになる。

さっきも応接室で泣いたばかりなのに、もう涙が溢れそう。この頃涙腺が弱くなっていて、泣き虫になってきていて本当に情けない。


そんな私に気づいたのか、ミリアドさんは私の隣に座り、私の背中を撫で続けた。


「……っ、あり、がとう…っ、ありがとう…っ、ございます…っ、ミリアドさん……っ」


「うん。泣き終わってスッキリしたら、魔法の使い方を教えるね。きっと楽しいよ。だから今はいっぱい泣いていいんだよ。」


泣くのを我慢し必死にお礼を言う私に、ミリアドさんは優しい声で全てを肯定してくれた。

その優しい声と肯定してくれた事に、我慢していた涙が溢れてくる。


ミリアドさんは、甘い砂糖のような人だ。

疲れた時に食べてると、疲れを癒してくれる。だから、食べて後悔してしまうデメリットよりも、食べる事を優先させてしまい、何度も何度も食べてしまう。

依存されやすそうな人。かく言う私もミリアドさんに依存しそうになっている。


ここが⦅酒場⦆エリアで良かった。

皆はしゃいでいるから騒音で、私が泣いている事がバレない。しばらく、この温かさに浸っていられる。








数十分泣いた頃、そろそろ正気に戻ってきた。そろそろ泣き止まないと、ミリアドさんの優しさに依存して本当に戻れなくなると、直感的に悟った私は無理やり涙を止め、ミリアドさんに笑って見せた。

まだ涙目なのは自分でも自覚しているけど、でも私がスッキリした事はミリアドさんなら分かると思う。

ミリアドさんは、人の表情を読むのが上手だから。


ミリアドさんはそれにと少し不満そうに見せたが、私がスッキリした事も分かり、そして自分が依存させやすいという事も自覚あるのか、困ったように笑った。

そして店員さんに代金を払って⦅酒場⦆エリアからでて、どこかへ私の手を引いてどこかへ歩き出す。


黙って付いて行くと、冒険者ギルドの中庭らしき広いところに着いた。

そこでは沢山の人が、戦っていたり、何かを練習していたり、何かを試していたり、寛いでいたりと、各々で何かをやっていた。


「ここは冒険者ギルドの中庭。自分を鍛えたり、新しい何かを開発したり、寛いだりする場所だよ。普通の場所ではあまり出来ない事をやりたい人がここで試す事が多いね。例えば、新しい武器を試しているとか、新しい技を練習してるとか、少数だけど練習したりしてる人の応援に来たりだとかね。」


「あっ! ミリアドさんだ!」


「えっ! まじ!? うわっ、本当だ!」


「あの、S級になれるのにA級のままでいる、〘豪風炎の兆し〙のミリアドさん!?」


「え、嘘ー!? こんなところで会えるなんて!!」


「きゃー! かっこかわいい! 包容力凄そう!」



ミリアドさんに中庭の事を教えてもらっていると、遠くが騒がしくなったと思ったら悲鳴のような歓声が聞こえ、かと思ったら中庭にいた人達にあっという間に囲まれた。


「ミリアドさん! 俺に訓練つけてください! お願いします!」


「私も強くなりたいんです……!」


主にミリアドさんが。

私はミリアドさんに手を繋がれているので、この場から動けない。解こうとしても痛みはないのにがっちりと握られており解けない。ミリアドさんが解かないのはここに残されるのが嫌なわけじゃなく、私が解こうとする事が嫌だったらしく、解こうとすればするほど痛みの無いのに拘束だけが強くなる。かといって、ここにいるのも怖い。ミリアドさんを置いていくのも嫌。どうしよう…。


どうしようかと悩んでいると、中庭の入口ら辺から「ミリ!」という馬鹿でかい声が聞こえ、周りにいる人達と共にそちらを見ると、赤い髪をポニーテールにしている茶色の目の女性がこちらに歩いてきていた。


その瞬間、ミリアドさんの時と同じぐらいの歓声が上がり、周りの人の興奮気味に、飛び跳ねたり話したりし始めた。


「やべー! 〘豪風炎の兆し〙の“ルージュ・ファイアー”だ! こんなところで、〘豪風炎の兆し〙に会えるなんて!」


「ルージュ様イケメン! 抱いて!」


「いっその事付き合って!」


女性のはずなのだか、そのルージュさんと呼ばれた人は普通の男性よりもかっこいい。というより、凛々しい。

これは、分かる気がする。本当にかっこいい。


ルージュさんは周りに軽やかに笑いかけながら、ミリアドさんの元へ歩いて来て、「やぁ!」と陽気に笑いミリアドさんに片手を上げた。


それを待ち望んでいたらしいミリアドさんの方も手を上げ、ハイタッチを交わした。


「ミリがあたしを呼ぶだなんて珍しいね。それで急に呼び出してどうしたんだい?」


「それは別室で話すよ。悪いけど、少し待ってくれるかな?」


「あぁ、いいよ。 じゃぁあたしは…って、ん? あれ? もしかして、その子がミリの言ってた奴かい?」


二人で話してたと思ったら急にルージュさんがこちらを振り向いて私に目を向けたので驚いて固まっていれば、わたしを安心させるように微笑んだ。


「君がミリの言っていた子だね? 初めまして。あたし、ルージュ・ファイアーっていうんだ。ミリとパーティを組ませてもらってるよ。可愛らしい君の名を聞いてもいいかな?」


ニコニコと笑いながら私の手の甲に口付けを落とした。

以前ミリアドさんにやられたあれと同じものを。

あの時は不意打ちだったから固まるだけで済んだけど、今ルージュさんがしたのは、真正面から。

恥ずかしさで顔が真っ赤になってどうしていいのか分からなくなって慌てていると突如、ぶつんっ! と音がした。


その時、私は薄れゆく空を見て、気絶するんだな、と悟った。



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