表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/11

10、ダンジョン

注意

・虫

・ほんのりグロ


「う、わぁっ!」


「え、お姉さんっ!?」


辺りを警戒する事だけに集中して足元をちゃんと見ていなかったせいで、石みたいな丸い何かに足を引っ掛けて転んだ。その際、ずしゃぁぁ、って言う痛そうな音がしたから多分血が沢山出ていると思う。


ポカン…、と、呆気に取られていると、慌ててミリアドさんが私を起こしてくれた。多分いつまで経っても起き上がらない私に心配になったのだろう。

だけどすみません。何が起こったのか理解出来なかっただけです。


慌てて私を起こしたミリアドさんは呆気に取られる私を見て、私が急に転んだせいで転んだ事を理解出来てなかったという事に気がついたのか、苦笑しながら頭を1、2回撫でた後、治癒魔法を、血が沢山出ている膝にかけてくれた。


「よし。お姉さん、もう痛くない?」


「あ、はい! 痛くないです!」


「なら良かったよ。」


あはは、と苦笑しながら笑うミリアドさん。

何かこの頃ミリアドさんの過保護度が上がっている気がする。確かにダンジョンにいるから過保護になるのは、まぁ…、仕方ないかもしれない。だって私、弱いから。

正直に言って、ミリアドさんの足を引っ張っている気しかしないけど。


あ、今私たちがいるのは、南にある街“べハル”の近くに存在しているダンジョンです。近く、と言っても、6キロぐらいは離れているけど。


そのダンジョンは巨大な石をくり抜いて出来たような入口を入り、地下に続いていくタイプのダンジョンで、このダンジョンで生息しているモンスター達が全て虫系。ポイズンスパイダーとか、大ムカデ、とか…。


このダンジョンは初心者の冒険者でもクリアできるほど、簡単らしく、私のレベルを上げるにも丁度いいらしいからと、ミリアドさんと共にこのダンジョンへと来たのが、1週間前。


何故1週間も経っているのに簡単なダンジョンをクリアしてないの? って思うかもしれません。でもそれには訳があります。


虫が苦手?


私は別に虫は苦手では無いです。普通の虫は。


じゃあ、モンスターを1人で倒すのがキツい?


違います、1人でモンスターを倒す事はちゃんと出来てます。偶にドジっちゃうけど。

まず私のレベルを上げるためにこのダンジョンに来たのだから、私一人でモンスターを倒せるようにならないと意味ないと思います。


じゃあ何で1週間も経ってクリア出来てないの?


それは虫にあります。いえ、虫は別に苦手では無いんですが、私が苦手なのが、無駄に足の多い虫なんです。


あの、歩く度に無駄に不規則に動く足。動く度にカサカサなる音。あれが苦手なんです。しかもこのダンジョンは1階から地下5階まで足の多い虫だけなんですよ。

このダンジョンは全部で地下10階しかないので、虫が苦手ではない人なら、初心者でもスタスタ歩いて行けるぐらいモンスターも弱いしダンジョン自体も小さいです。


ですが逆に虫が苦手なBランクぐらいの冒険者さんまでは、クリアするのにかなりの時間を必要とします。

それぐらい沢山いるんです。足の多い虫が。


「お姉さん…、1回休憩にしようか。」


「う…、はい…。ごめんなさい…。」


私の酷い失敗を見て、ミリアドさんは休憩時と判断したのか、このダンジョン内に小さなテントを張り出した。

小さい、と言ってもそれは外見だけで、中は空間魔法で、ミリアドさんと私、あと2人は余裕で入れる広さになっているテントを。


ミリアドさんに促され先にテントの中に入ると、大銃を抱き締めてテントの隅で蹲った。

ミリアドさんに着いてきてもらっているのに、ミリアドさんに迷惑をかける事しか出来ていない。自分がここまで役立たずだったとは…。

王族達の言っていた事はあっているかもしれない。


今日の事やそれより前の事を思い出してネガティブ思考になっていると、テントを張り終えたミリアドさんがテントに入ってきた。


お疲れ様です、と、労おうと顔を上げた瞬間気付いた。ミリアドさんの雰囲気がいつもと違う事に。

なんて言うか…、リリちゃんと同じ雰囲気になっている。

いや、リリちゃんの雰囲気とはちょっと違う。何か甘いような…。

そこまで考えてそう思った理由を思い出し、ハッとして慌てて立ち上がったが時既に遅し。ミリアドさんはもう私の前にいてゆっくりと優しく、だが逆らえないような圧で、私の肩に置いた手をゆっくりと重くしていく。


それにより私は再び座り込んで、ミリアドさんも私の肩に手を置いたまま、私の前に座り、にこり、と笑った。

その笑みに何か嫌な予感を感じたのは気のせいだと思いたいし、ここから逃げたい。


何て一瞬考えたが、無理だと諦めた。

だってさっきのは、ミリアドさんがテントの入口を塞ぐように立っていたから逃げるなんて無理だし、今逃げようと思っても肩に置いてある、痛くないのに絶対外せない程ガッチリと掴まれているミリアドさんの手がある。そして何よりミリアドさんから逃げられる訳ない。

諦めに入った私を見て、ミリアドさんは笑みを更に深くした。


「お姉さんは、やっぱり聡明だね。」


「いえあの、あの、えっと…、」


ミリアドさんから逃げられないと分かっていても、この場から逃げようと、私は口からは意味の無い言葉が出し、必死に頭をフル回転させていたが、それを止めるようにミリアドさんはいつもより低く甘い声で、私の耳元で囁いた。


「アベリアは、とても可愛らしく聡明な、いい子だね。頑張り屋なアベリアが、僕は大好きで愛しているよ。僕の恋人になって欲しいぐらいに。」


「っ!」


ミリアドさんのいつもと違う雰囲気はこれだ。ミリアドさんがいつも私を褒め殺そうとする時に出る甘い雰囲気。

それに、いつもは「お姉さん」って呼ぶのに、急に名前で呼ぶのは反則だと思います!


ミリアドさんの甘い雰囲気にか、ミリアドさん甘い言葉にか、それとも両方なのかしれないが、それにより私は腰が砕けた。


腰から下が電流が走ったようにビリビリして、上手く力が入らない。そしてそれにミリアドさんは気づいているはずなのに、ミリアドさんはニコニコと笑みを崩さずに、腰が砕けた私を見ている。


「お姉さん、今のままじゃモンスター倒しに行けないから、今日はこのままテントにいようね?」


「じゅ、10分っ! 10分で何とかしますっ!」


「ふふ、うん。良いよ。頑張ってね、お姉さん。」


ミリアドさんから今以上に甘い雰囲気が溢れ出したので、慌てて10分で何とかする、と声を張り上げると、ミリアドさんはクスクスと笑ってテントから出ていった。


多分ネガティブ思考になっている私を励まそうとやってくれたんだろうけど、流石にこれは心臓や腰に悪い。本当心臓が止まるかと思った。あと、身体が沸騰したように熱い。


…それにしても10分で、この砕けた腰、何とか出来るでしょうか…。

……出来なさそう……。…いや、何とかしないと甘い雰囲気を出したミリアドさんと朝まで一緒にいないといけなくなる。そうなったら私、死んじゃう。


とりあえずミリアドさんが戻って来るまでに、この腰を何とかしなくては。












「ふふふ。」


テントを出るとついに笑いが込み上げて来て、我慢出来ず小さく声に出して笑ってしまった。先程からお姉さんのあの可愛い反応を思い出す度に笑いが込み上げる。


ちなみにテントにはただの結界と防音結界を張っているのでモンスターがテントに入ってくる事も無いし、僕の小さく笑う声も、テントの中にいるお姉さんには聞こえない。


本当にお姉さんは可愛い。


いつもより甘い雰囲気を濃くするだけで、あんなに慌てるなんて。前までは違ったが、今ではお姉さんの中で1番は僕だ。

だからお姉さんは自分の感情よりも、僕の雰囲気や言葉で頭をいっぱいにしている。

今でもテントの中で、お姉さんは僕の事で頭いっぱいにして、何とか立とうと頑張っているはずだ。

わざといつもより甘い雰囲気を出したからね。


「それにしても…、いつもより数が多いね。」


視線の先にはこちらへ向かって来るいつもより多い虫系のモンスター達。しかも足の多い虫系モンスター。

これは間違いなく王の仕業だろうね。


あれかな。お姉さんの嫌いなモンスターを沢山発生させて、自分に冒険者は無理だ、王宮に帰りたい、と思わせようとしているのかな?

あとは、お姉さんは優しいから、僕の足を引っ張りたくない、と思うだろうから、それも利用しようとしているんだろうね。

だけど…。


「お姉さんは渡さないよ?」


『ギィィギャァァ』


不快な音のような鳴き声を上げ、モンスター達は襲いかかって来る。だけど頭が弱いね、あの王。


「〖ファイアー〗」


『ギィギャァァァァ!!!!』


燃やせば直ぐに討伐出来る。あとは切り刻む、とかね。


小さな火の玉を六個くらい作り、〖ウィンドー〗で六個の火の玉を巻き込み、小さな炎の竜巻を作って、モンスター達に放てば、モンスター達は炎の竜巻に巻き込まれ、切り刻まれたり、燃やされたりして息絶えていく。


炎の竜巻が通って行った場所には、ピクピク動く虫の足やら半分しか無い虫の体やらが痙攣し、微かに動いて息絶えていくのや、奥の方から聞こえる虫モンスター達の不快な鳴き声に、特に何も思わない為、淡々と〖ファイアー〗で燃やし尽くし、その際に出た嫌な臭いがする煙を、風魔法で奥の方へとやれば、更にモンスター達が出てくるので、お姉さんの倒す分のモンスターを残しつつ倒していく。


ある程度倒した後は、眠らせたり、麻痺にしといたりしていたお姉さんが倒す分のモンスターを風魔法で奥の方へと運ぶ。


それらを終えた後、あの王に対する感情が出てきそうになるのをふぅ、と息を吐いたり、時折お姉さんの笑顔を思い出して癒されながら、何とか抑える事が出来た。


やっぱりお姉さんは凄い。僕の感情を抑える事が出来るんだから。思わず漏れた笑みを浮かべながら、僕はお姉さんが出てくるのを待った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ