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9、第4王子

1分もかからず読めるほど短いです。


ある部屋の一室に入れば、ソファに座っていた男性が僕を見た瞬間、立ち上がったり軽く頭を下げた。


「急に来てすまないな。」


「いいえ? こちらも丁度そちらにお話がございましたので、丁度良いタイミングでした。」


「……そうか。」


僕が言おうとしている事に身に覚えがあるためか、目の前の男性は苦虫を噛み潰したような顔で私を見つめた。


彼の名前は、“リルラン・ローベル”。短く刈った黄色の髪に茶色の目を持つ、刺々しい雰囲気を持ついかつい顔の青年だ。

名前で分かる通り彼はローベル王国の第4王子で、この国の王族の中で唯一まともな人間だ。


もし今ここにいるのが、彼以外の王子を名乗る人間だったなら、すかさず呪いをかけたし、何より会わなかったと思う。あと、僕がお姉さんと会う前からこの⦅宿屋⦆に来ていて、“私“ に依頼しに来た人でもある。


王族達がやろうとしている事を阻止するため、お姉さんみたいな道具扱いされている少女達を救うために、僕に協力を求めて来た僕の正体を知る人間。

本当、よくその若さで私の正体に気付けたよね。いや…違うか。彼が気付けているのは、私が請け負っている仕事の方だろう。

本当の私の正体は、フィーとリリアンゼしか知らないしね。


それにしても、お姉さんも僕の秘密を知る時が来るのかな? 僕の秘密を知った時、お姉さんはどんなに反応をするんだろう?


彼との話の最中なのに思わずお姉さんの驚いた顔を想像してしまって、危うく笑ってしまうところだった。

でも、お姉さんは僕の正体がどんなのでも受け入れそうな気がする。


お姉さんの嬉しそうな笑顔を思い出して癒されてから、彼との話し合いのために、僕は思考を切り替えた。


「それで、今回は何の御用でしょうか?」


「それは貴殿がよくしっているであろう事だ。」


「貴方が持っている話は、全て、よく知っているので、何の話の事か存じ上げません。申し訳ありませんが、直接言っていただかないと。」


そう言う私の言葉の裏にある本当の意味を汲み取ったのか、第4王子様は言い淀みながら、ポツリと言った。


「昨日…、貴殿が保護している少女の捜索隊が結成されていたんだ。少女━━、アベリアを見つけ次第、保護しろ、と…。」


「何がなんでも、お姉さんに王族の子を産ませたいのでしょうね。」


それに“保護“、じゃなくて“捕獲”、でしょうに。と、心の中で呟いた。

きっとこの国の王は、お姉さんを“保護(捕獲)”したあとは、ちゃんとお姉さんに“謝って(命令して)”、第1王子が“勝手な事(逃がす事)”をしないよう叱り、“お姉さん(王様)”が、“安心(監視)”出来るように“警護(監禁)”するんだろうね。

本当にこの国の一族達はやり方が汚くて、私を怒らせるのが上手だよね。


前に一度、この国の一族達は私の逆鱗に触れる行為をした事がある。彼らにとってはどうでもいい事だったんだろうけど、私にとったらそれは喧嘩を売られたのと同じだった。だから私は、王族達全員に呪いをかけた。

呪いと言っても、体調を崩しやすくなる呪い、っていう、比較的症状の軽いやつのだけど。


1ヶ月くらいの間、目の前にいる第4王子様以外の王族達は、体調を崩し、一日の半分を寝ていた。見ていて凄く面白かったよ。イラつきは消えなかったけどね。


不安そうにこちらを見つめる第4王子様に、続きを促すように黙っていると、第4王子様は何かを言おうとしているが、何も言わず口を開閉させるだけだった。


正直に言うと、彼が何を言おうとしているのか想像出来ていた。

だからこそ、彼がその言葉を言いたくないと思っているのも分かる。それを言ってしまえば、お姉さんを捕まえようとしていると、言っているのと同じなのだから。


彼には悪いけれど、その先は必ず言ってもらう。その先を言ってもらわないと何も始まらないのだから。

そして彼がその先の言葉を言った時から、あっちとこっちの勝負が始まる。

彼をこの勝負に巻き込ませてしまって悪いとは思うけど、今の優先事項は、お姉さんだ。


彼にその先の言葉を言ってもらうため、机を指でトン、と軽く叩けば、第4王子様は観念したのか、1回深呼吸をした。それから口を開き、私が欲しかった言葉をくれた。


「それで陛下が、アベリアの身元引き受け人の貴殿に、褒美は何がいい、と聞くように、と…。」


どこかでこの勝負の始まりを示す音が鳴り響いた。

始まったのだ。勝負が。

でもこれは、一方的な殺戮。

あちらは何もする事が出来ず、ただ震えて自分の死を待つしか出来ない。


覚悟しなよ、表面だけの王様。


ふぅ…、と一息を吐き、第4王子に向けて笑う。

きっとこの言葉だけで、私がお姉さんを返す気がないのが分かるだろう。


「何の褒美ですか? 褒美を与えられるような事はしていませんよ。と、陛下にお伝え下さい。」


さて…、この国の王様は次はどうやって動くのかな。


表情を変えず言い切った私に、第4王子様は何とも言えないような顔をして「分かりました」と言って、部屋を出て行った。


お姉さんの━━、僕の大切な人の為に悪いけど君の国、壊させてもらうよ。




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