■ バイグォ・ハサム ガイド ■
【バイグォ・ハサム】
ヤウ・ハサムと呼ばれる湾は、細長く陸地に食い込むような形をしている。その最奥に流れ込む川の名前は、バイグォ・チャーンと呼ばれている。
この辺りの言葉で、チャーンというのは道のことだ。
バイグォというのは、この地方に残る昔話に出てくる大きな生き物のことを指す。とても大きい蛙のような姿だったらしい。
その大蛙が通った跡が川になったと言われており、そのため、この川は大蛙の道と呼ばれている。
その川をさらに遡ると、今度は大きな湖が姿を見せる。この湖はバイグォ・ハサムと呼ばれている。
この辺りの言葉でハサムというのは、ある程度の大きさがあり、周囲をある程度陸地に囲まれたある程度の大きさの水のある地形のことを呼ぶ。そのため、湾も湖も、同じハサムという言葉で指すことが多い。陸地に囲まれていない、海のことはマーハスと呼んで区別している。
大蛙の湖にももちろん、大蛙についての昔話が残っている。大蛙の湖は、別名バイグォ・ラーグと呼ばれ、その名前の通りに大蛙が自分の巣として掘った穴だという。
大蛙はとても大きな体で、なのでとても大きな巣が必要だった。それで三日三晩かけて穴を掘った。三日三晩かけて掘ったので、とても大きな穴になった。
そこに川の水が溜まってできたのが、大蛙の湖だと言われている。
【バイルッアー】
大蛙の湖では、水の中から光球が発生して、それがそのまま空へ登ってゆく現象が見られる。発生するのは日が沈んでしばらくしてからで、日が登るよりはだいぶ前には終わる。
また、光球が発生する時期は決まっている。蛙の卵が孵ってしばらくすると、夜に光球が発生するようになる。それからしばらくの間、光球は毎日見られる。そして、始まった時と同じようにある日突然終わる。
この現象はバイルッアーと呼ばれている。ルッアーというのは、蛙の子供のことで、つまりは蛙の幼生のことを指す言葉だ。
この辺りでは、蛙には四つの姿があると言われている。
一つは卵、二つ目は蛙の幼生、三つ目は蛙の幼体、そして最後は蛙だ。
四つの姿があるのは大蛙も同じだ。大蛙の卵は、湖の底にある。湖から採れる白い石は、孵ることのできなかった大蛙の卵だと言われている。
次の卵は無事に生まれるようにと願いを込めて、この石に大蛙の姿を掘ってお守りとするような風習もある。最近では石に掘る絵も様々で、人気の土産物にもなっている。
そして、大蛙の二つ目の姿がバイルッアーだ。普通の蛙は水辺で暮らし、その幼生は水の中で暮らす。大蛙は水の中で暮らし、卵から孵った幼生は空で暮らす。
卵から孵った幼生がそうやって旅立つ姿が、バイルッアーだと言われている。この時期は夜に湖岸に集まり、バイルッアーを送り出す。
そうやって旅立ったバイルッアーは、やがてバイファーパとなって戻ってくる。バイファーパは雨雲と雷に乗って帰ってくるので、その時期には嵐が多くなる。バイファーパが多く戻ってくると豊作になると言われていて、この時期の雷は多ければ多いほど良いとされている。
【ストゥ・ティヤ】
ストゥ・ティヤは、この地域でよく食べられている料理だ。
ストゥはスープや汁気の多い煮込み料理のことで、この地域では魚介を使ったスープがよく食べられている。
ティヤは、ハウと呼ばれる穀物を麺状に加工したもののことを指す。もっちりとした歯応えが特徴だ。ハウはこの地域ではよく食べられていて、他にもフーワ・ガオやフワン・ガオなど焼き菓子の生地にも使われている。
ストゥ・ティヤは、スープの味や麺の太さなど、作る人によって様々なバリエーションがある。野菜や魚、肉などと一緒にスープで煮込んで食べるのが一般的だ。
ストゥ・ティヤを提供している店では、スープの具を一緒に煮込むのではなく、様々な具を別に用意して、客が具を選んで後から乗せるような形式を取っていることもある。具だけを買っていく人も多い。