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旅をする──ドラゴンの少女と巡る異世界  作者: くれは
第十章 海に住む人
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■ ウリングモラ・ナングス ガイド ■

【ウリングモラ・ナングス】


 ウリングモラ・ナングスは、ナングスにある海上の島々のことを指す。

 ウリングラスと同じく、その名前は「(モーラ)暮らす(ウーリ)」という意味だ。ウリングラス・ナングスとルーツを同じにする人たちが暮らしている。

 実際、言葉も文化も風習もほとんど変わりがなく、そこで暮らす(ナングス)たちにとっては「海で寝ているか、森で寝ているか」程度の違いしかないようだ。彼らは昼間はお互いに行き来し、混ざって暮らし、時にはお互いの地域の家で寝泊まりもする。

 それでも、彼らの中にはそこに明確な線があるらしい。彼らは、自分がウリングラスなのかウリングモラなのか、はっきりと名乗る。

 彼らは、(ナングス)の中にも(パガラ)に近い者と(ケイワ)に近い者がいるのだと言う。つまり、(パガラ)に近い(ナングス)(モーラ)暮らし(ウーリ)(ケイワ)に近い(ナングス)(ラース)暮らす(ウーリ)ということらしい。

 自分がどちらに近い(ナングス)なのかは、彼らの中では自然とわかるものらしい。




【ドゥルサ・ナガ】


 ナガの背中(ドゥルサ・ナガ)は、ウリングモラ・ナングスにある島の一つだ。島は大きな円になっており、その内側はぽっかりと陸地がなく、ぐるりと囲まれた海面はウリングラスの海岸線と同じく森になっている。

 この丸い島は、その名前の通りナガの背中であるとナングスの間では伝えられている。


 ナングスによって傷付けられたナガは、ウリングラスの海岸を離れて今のウリングモラの辺りまで逃げてきた。

 ナガは傷の痛みで海の中をのたうち回った。その時に落ちた鱗や流した血から、ウリングモラの島ができた。

 最後にナガは傷を癒すために長い体を丸めて眠った。いつまでもいつまでも眠っていた。ある日一人のナングスが様子を見にいったら、ナガは丸くなったまま石になって固まっていた。

 それが島になったのが、今のナガの背中(ドゥルサ・ナガ)なのだと言う。


 ドゥルサ・ナガに暮らす人たちは、その丸い砂浜の内側の森に家を作り、そこで寝泊まりをする。




【ヤパ】

 ヤパは、ウリングラスの地域でよく食べられている果実だ。

 未成熟の実は、うっすらとした淡い緑色だ。水分を多く含んでいて、ナングスではよく調理して食べられている。

 皮を向くと、不透明の白っぽい果肉がみっちりとしているが、火を通すと少し透明感のある色合いになる。そして、ぱりっとした折れるような歯応えを楽しむ。

 薄切りにして魚介のスープに入れたり、適当な大きさに切って調味液に漬け込むのが、代表的な調理例だ。


 成熟したヤパの実は、かなり雰囲気が変わる。

 色は、その皮も果肉も真っ赤になる。そして、力を入れて触れれば潰れそうなほどに柔らかく熟れる。

 非常に甘みが強くなり、未成熟の時にあった青くささはほとんど感じられなくなる。酸味もない。

 まったりと滑らかな舌触りで、口の中で容易に潰れる。

 成熟したヤパは、料理には使わずにそのまま食べることの方が多い。




【トホグ・モーラ】


 ウリングモラの海岸には、丸い石が落ちている。

 綺麗な球体のものは少ないが、表面が磨かれたように滑らかで、角がなく、つるりとした曲線を持った石だ。それらの石は、波によって磨かれたものだ。

 例えば、結晶化した葉(マティワニ)が海に落ち、波によって磨かれ、ウリングモラの海岸に流れ着く。あるいは、海底に住む魚の死骸が固まり石になり、それが磨かれ、美しい宝石のようになるらしい。

 その曲線から、ナングスはそれを海の卵(トホグ・モーラ)と呼ぶ。装飾に使われることも多い。


 海の卵(トホグ・モーラ)自体はありふれたものだが、色によって珍しさが違うらしい。

 よく見かけるのは、結晶化した葉(マティワニ)の濃い青い色で、逆に珍しいのは、透き通って銀色に輝くものだ。

 透き通った銀色のものは、ナングスではナガの鱗(クラン・ナガ)だと言われている。

 ナガの鱗(クラン・ナガ)は、ナングスの伝承で実りをもたらしたとされているため、ナングスにとっては豊穣の象徴だ。そのため、ナガの鱗(クラン・ナガ)が流れ着くと、それを祝って祭りをする。

 ナガの鱗(クラン・ナガ)だけは特別で、装飾などには使わず、また実りをもたらすよう祈りを込めて森の中に埋める。

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