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旅をする──ドラゴンの少女と巡る異世界  作者: くれは
第八章 ドラゴンの骨
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■ アズムル・クビーラ ガイド ■

【アズムル・クビーラ】


 アズムル・クビーラは、タザーヘル・ガニュンの砂漠の中で最も大きなオアシスだ。

 砂漠の中にあるが、ほかの地域に比べて過ごしやすい。日射しはほかの地域と変わらない強さだが、昼間の暑さは穏やかだ。夜は涼しく、時期によっては明け方に霜が降りることもある。

 周辺に動植物が多く、食物も豊富だ。特に、暑さにも寒さにも強いジェロは、この辺りではよく見かける。ジェロはその強い酸味が特徴的な果実だが、霜が降りるほどの寒さで甘みが強くなる。

 アズムル・クビーラで飲まれるジェロ茶が甘いのは、そのためだ。


 アズムル・クビーラというのは、その名前の通りドラゴンの骨(アズムル・クビーラ)に由来する。

 街の地下には、実際にドラゴンの骨(アズムル・クビーラ)がある。ドラゴン(クビーラ)は、火の精霊(ルハル・ナー)水の精霊(ルハル・マー)によって生み出された精霊(ルーハ)であると言われている。

 ドラゴンの骨(アズムル・クビーラ)は街の者たちによって管理され、誰でも見ることができるようになっている。街の者は時折、ドラゴンの骨(アズムル・クビーラ)を見に行って、精霊(ルーハ)への祈りを捧げる。

 精霊であるドラゴン(クビーラ)の嘆きが、この街の始まりだという。


 火の精霊(ルハル・ナー)によって大地が燃やされ、水の精霊(ルハル・マー)が水になり、星になった後、タザーヘル・ガニュンは人をを産んでこの地に住まわせた。けれど、火の精霊(ルハル・ナー)によって燃やされた大地は過酷で、人はなかなか大地を良くすることができなかった。

 人々は、わずかな水の近くではなんとか生きていたが、砂漠の中に入ればたちまちに弱って死んでいった。やがて人は、大地を良くするという言葉を忘れ、人と人の間で争うようになった。

 ドラゴン(クビーラ)は自らを産み出した火の精霊(ルハル・ナー)水の精霊(ルハル・マー)がいなくなってしまい、深く悲しんでいた。その上、人が大地を良くすることを忘れ争う様子を見て、悲しみは激しい怒りになった。

 ドラゴン(クビーラ)の怒りは激しく、砂嵐となって砂漠を覆った。厚い砂嵐のため砂漠に日は射さず、またドラゴン(クビーラ)の力でわずかに生えていた草木は凍りつき、生き物たちは凍えて多くが死んでいった。

 タザーヘル・ガニュンはドラゴン(クビーラ)の怒りを鎮めるために、砂漠の真ん中の地下にその体を埋めた。ドラゴン(クビーラ)の怒りは落ち着いたが、悲しみは尽きることなく溢れ、大地を凍らせた。

 タザーヘル・ガニュンはドラゴン(クビーラ)に、人々を助けるよう言った。人々が大地を良くしようと生きているならば、それを助け、悲しみは慈悲(ラッハ)にしなさい、と。

 それ以来、ドラゴン(クビーラ)の悲しみはドラゴンの慈悲(ラハル・クビーラ)になった。

 ドラゴンの慈悲(ラハル・クビーラ)は過酷な砂漠で人を助ける。水も溢れ、草木も産まれ、生き物も集まり、人はそこに街を作った。

 ドラゴン(クビーラ)は今は骨だけになったが、それでも人々に慈悲(ラッハ)を与えてくれているのだという。


 人々が大地を良くすることを忘れると、ドラゴンの慈悲(ラハル・クビーラ)はまた激しい怒りに変わると言われている。

 なので、この街の人々はドラゴン(クビーラ)をとても大切に思い、祈りを捧げるのを忘れない。




【ラハル・ラマー】


 アズムル・クビーラの地面の下にはドラゴンの慈悲(ラハル・クビーラ)がある。この街が過ごしやすいのはそのためだ。

 この街の大抵の家は、地下に貯蔵庫を持っている。地面の下は冷たく、ドラゴンの慈悲(ラハル・クビーラ)を集めて置いておけば水が凍るほどの温度になる。

 この街の人々は地下の貯蔵庫で、暑さで傷む食材を長持ちさせたり、果物や飲み物を冷やして昼間の暑さをしのぐために使ったりしている。


 特に好んで食べられているのが、氷の慈悲(ラハル・ラマー)と呼ばれるものだ。

 綺麗な水を凍らせて細かく砕く。そこに、バーランの甘い茎や果肉を細かく刻んで混ぜる。場合によってはほかの果実を混ぜたり、冷やしたジェロ茶と混ぜたりもする。

 (ラマー)を使う非常に贅沢な食べ物だが、アズムル・クビーラでは珍しくないものだ。




【エーラーナー】


 エーラーナーは、砂漠に生きる鳥だ。

 体はとても大きく、体の位置は人の腰よりも高く、頭の位置は人よりも高い。がっしりとした丈夫な足があり、羽はあるが多少飛び上がることができるくらいで、空を飛ぶことはない。

 その頑丈な足で、砂を蹴って移動する。かなりの速さで駆けることもできる。

 羽の色はくすんだ灰色で、その中で長い尾羽だけが鮮やかに赤い。地面を駆ける時、この尾羽が舵の役目を果たしている。

 暑さや乾燥に強く、少量の水や食べ物だけでもかなりの長期間を生き延びる。

 砂漠に迷って死にかけた持ち主を背中に乗せて、かなりの長い距離を飲まず食わずで走り続け、街まで戻ってきたエーラーナーの話も残っているくらいだ。


 エーラーナーは、大地を良くする人が砂漠を渡ることができるように、羽の精霊(ルハル・ヤーナ)が産み出して人に与えたものだと言う。

 タザーヘル・ガニュンでは「良いエーラーナーの持ち主は長生きする」と言われており、旅の友としてとても大切にされている。


第九章は、もしかしたら四月中の更新になるかもしれません。

諸事情で次の更新までがいつもより長めになると思いますが、しばらくお待ちください。

今頃二人は砂漠を超えているんだなあと想像していただけたら嬉しいです。

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