四角の外(四)
ユーヤは「旅」って言った。どこかに行くこと。
ユーヤはわたしを助けてくれた。たくさんの嬉しいものをくれた。また四角の中でずっと眠ってるのは嫌。苦しいのも嫌。だから、ユーヤと一緒に行く。どこかに行く。
四角の外は静かじゃない。たくさんの音。たくさんのにおい。たくさんの動くもの。たくさんの明るい。それから、暗い。
不思議なものもたくさんある。「あれは何?」って聞くと、ユーヤが教えてくれる。
ユーヤの言うことは時々わからない。ユーヤにもわからないことがある。でも、ユーヤはちゃんと言ってくれる。ユーヤが話す言葉もみんな嬉しい。
前足が手になって、羽もなくなった。「人」は後ろ足だけで「歩く」。「人」じゃなくなってユーヤを乗せて飛んだけど、ユーヤは歩こうって言った。「歩く」と「話す」っていっぺんにできる。「話す」のは楽しい。だから「歩く」。
それに、足を動かすと進むことができるのって面白い。四角の外はどこまでもずっとずっと進むことができた。四角の中は、すぐにたくさんの四角でおしまいだった。
どこでおしまいになるのかユーヤに聞く。ユーヤもわからないって言った。
「ずっと行ったら世界の果てがあるのかも。もしかしたら、どこまで行っても果てはないのかも」
四角の外にはおしまいがないかもしれない。すごい。どこまでも行ける。四角の中と全然違う。「旅」って楽しい。
ユーヤがくれたものはたくさん。「旅」もその中のひとつ。
だから、わたしはユーヤと「旅」をする。
改めて、ここまでお付き合いありがとうございました。