表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
146/150

渡りの仲間(八)

 ユーヤがドゥルサ・ナガに行きたがっている。もう少しヒブル・ターバル(渡りの仲間)でいたい。ダキオにそう言ったら、ダキオにはナーナン(問題ない)と言われた。やっぱり面白そうな顔をしている。ジッタ・ムゼイ(本当に気に喰わない)

 タフル・アーリブ(馬鹿みたいに変わり者)なユーヤとシルは、今度はマティワニを買いたい(ヴォイロ・クィスタ)と言い出した。

 マティワニはアス・ナガ(ナガの木)の葉っぱだ。綺麗なものではある。けど、そこらにいくらでも落ちている。海に手を突っ込んで拾ってみせる。

 シルも俺の真似をしてマティワニを拾い上げた。拾い上げたマティワニを握り締めて、ユーヤのところに駆け戻る。シルは身が軽い。不安定な木の根っこの上をなんなく跳んでゆく。

 俺はもういくつかマティワニを拾って、荷物に放り込む。ウリングラスでは珍しくもないけど、タザーヘル・ガニュンだと珍しがられる。物好きが買いたがることがある。だから、いつもいくつかは拾って帰る。

 初めて拾ったときのことを思い出す。俺も興奮してマティワニを拾い上げた。それをダキオに見せた。マティワニの綺麗さも、もちろん面白かった。でもそれだけじゃない。

 雨がたくさん降って、こんなに植物に囲まれて、食べ物もたくさんある。子供の頃の俺には信じられなかった。きっと、タザーヘル・ガニュンに外があるということが信じられなかったんだ。そこに広がる景色を自分で見てもなお。

 ダキオはマティワニを拾い上げた俺に「この先にはまた違う場所がある」と教えてくれた。

 今でも行ったことはない。ダキオもきっと名前しか知らない。けど、名前は知っている。ウリングラスから海岸沿いを行けばハイフイダズ。アレム()の先にルキエー。その海を越えたらオージャ。空にはトウム・ウル・ネイ。

 それでも、どれだけ名前を知っても、こうやってナングスたちやジュナブ(外の人間)を見ても、それぞれの場所に人が暮らしているなんて、俺には想像がつかない。

 ユーヤとシルは外からやってきた。きっとそんな場所を見てきた。そしてまた外に行く。また違う場所で何かを見る。言葉も喋れないのに。ターバル(渡り)もろくにできないのに。それはきっと、俺の想像を超えたすごいことだ。

 ユーヤとシルは、何か特別なものでも見るような顔で一緒にマティワニを眺めている。俺はそんな二人を眺めて、こんなタフル・アーリブ(馬鹿みたいな変わり者)ヒブ(仲間)になれて良かったと思っている。




 俺はヒブ(仲間)ハミヤ(大事)にするし、ヒブ(仲間)ハミヤ(大事)にしないやつはタフル・アバ(大馬鹿)だ。

 ナーナン(それで良い)




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ