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渡りの仲間(七)

 ウリングラスの砂浜で、ユーヤがドゥルサ・ナガの島影を指差す。そこに行きたいのだと言う。何をしに行くのだと聞いた言葉は、なかなか通じなかった。

 何度も言葉を変えて繰り返して、ようやく返ってきたのは「見たい(ヴォイロ・ヴェーデ)・ラーゴ」だった。ラーゴ、というのはオージャのストゥラーダ(昔話)じゃなかったか。ユーヤにふざけている様子はない。まだ言葉が通じてないのかもしれない。

 俺が何も言わないでいたら、ユーヤは「クビーラ」とも言った。クビーラはアズムル・クビーラにいる。どうしてその名前が出てくるのかがわからない。

 クビーラはウリングラスにいないと言えば、ユーヤは困った顔をした。それから、片言のオージャ語で、懸命に話し出す。ニッシ・メ・ラーゴ(ラーゴの島)。ラーゴはいない。トウム・ウル・ネイ。ルーがいた。アズムル・クビーラ。ラハル・クビーラ(クビーラの石)を見た。

 そしてまた島影を指差して「行きたい(ヴォイロ・ティラ)」と言う。

 何でかはさっぱりわからない。でもユーヤとシルは何かを見るために旅をしている。アズムル・クビーラはきっとその一つ。理由もわからない。けど、ユーヤはどうにも必死だった。

 アーリブ(変なやつ)だと思う。必死になるだけの何があるのか、俺にはさっぱりわからない。言葉も喋れないのに。ターバル(渡り)もろくにできないのに。

 でもきっと、ユーヤにとって──もしかしたらシルにとって、ハミヤ(大事)な何かがあるんだろう。俺は「タフル・アーリブ(本当に変なやつだ)」と笑った。ユーヤはきっとこの言葉を知らない。困った様子で、片言のオージャ語で「ハリストゥ(ありがとう)」と返してきた。

 タフル・アーリブ(ばか)と言って礼を言われたのは初めてで、俺は大笑いした。





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