渡りの仲間(六)
今回のヒブル・ターバルの中でウリングラス・ナングスまで行くのは、俺とダキオ、それからユーヤとシルだけだった。残りはウリングラスの森の手前でまた戻っていった。
ウリングラスは相変わらず蒸し暑い。水も植物も食べ物も豊富で、初めて来たときは驚いた。
初めてのときは、空気の重さにも、食べ物がすぐに腐るのも驚いた。ナングスたちが気前よく食べ物を配って回るのは、それでじゃないか。とにかく次々と食べ物を渡された。その辺りで採ってきた果物や、海に入って獲った魚や貝、それらを使った料理。それからアガ。
その頃の俺は子供だったので、ただもらうばかりだった。ダキオが俺の分まで、ナングスたちに食べ物を渡していたらしい。ホブザだとかヤファタ・ロヌムだとか。特にホブザは残しておいてもウリングラスだとすぐに腐るから、さっさと配って食べきる方が良い。
こうやって、お互いの食べ物を分け合って一緒に食べるのが、ナングスたちと仲間になる方法だ。
ウリングラスに到着してすぐ、重たい空気が雨になった。デリクケのために近くの家に駆け込む。何もわかってない様子のユーヤとシルも引っ張り込む。そうなれば、あとはナングスたちから食べ物が出てくる。
ユーヤは初めてのことで、渡される食べ物に戸惑っている様子だった。そして、慌てたように慣れないタザーヘル・ガニュンの言葉でクランジランを口にする。
きっと、昔の俺はこんなだったんじゃないかという気がした。感謝を口にするだけ昔の俺よりハッサかもしれない。マヤー、あの時の俺はもっと子供だった。このくらいの歳の頃なら俺はもっと分別があった。
俺はあの頃のダキオのように、ユーヤとシルの分までナングスに食べ物を配って回る。隣でダキオが面白そうな顔をしているのがムゼイ。
ナングスの誰かがくれたのは、この辺りでよく見かけるトホグ・アスという果物だった。ユーヤもシルも手に持ったまま食べようとしない。食べ方がわからないのかと気付いた。目の前で食べてやったらようやく食べ始めた。
食べている間、ユーヤは何かとシルの世話を焼いていた。この二人は恋人というより俺とダキオみたいなものかもしれない。そのダキオは俺が何かとユーヤの世話を焼いているのを見て、笑っていた。やっぱりムゼイ。