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渡りの仲間(五)
ジーマトを頼りにターバルは続く。体を冷やさないようにアレム・ヤードゥルを纏って、アレムを踏むエーラーナーの背に揺られる。
ジュナブの二人もエーラーナーに揺られている。二人乗りだ。ユーヤはぐったりとして、後ろに乗っているシルに寄りかかっている。眠っているのかもしれない。
こういう時、シルは不意に歌い出すことがある。言葉はわからない。意味がある言葉なのかもわからない。ヒブの誰も、それがどこの歌なのか知らなかった。
女の声は高く細く澄んでいる。静かなラール・アレムに、染み渡るように響く。
誰かは見た目の通りにラマーのようだと言った。他の誰かはアレムに降り注ぐクファル・ジーマトのようだと言った。
ジーマトは、水に姿を変えたルハル・マー。クファル・ジーマトは水の輝きだ。人のターバルを助け導いてくれるラハル・マー。
シルはきっとユーヤのために歌っている。それは確かに慈悲だな、と思った。