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渡りの仲間(四)

 ターバル(渡り)に慣れないジュナブ(外の人間)のために、進みはゆっくりだ。そのターバル(渡り)の中で、ヒブ(仲間)の誰もがジュナブ(外の人間)の──特にユーヤ(男の方)を構っていた。

 ラハル・マー(オアシス)で手に入れた新鮮なロヌムだとか、シュラム・ジェロ(ジェロ茶)だとか、ヤファタ・ロヌム(干しロヌム)なんかを青褪めた唇のユーヤに渡す。

 ユーヤと交渉したやつがヒブ(仲間)に伝えたせいだ。ジュナブ(外の人間)の男はシャルオム(交渉)も知らない、と。

 つまり、だ。「お前のせいで追加の食料と水が必要だ。その金を出せ」という説明と共に伝えた言い値を、ユーヤは素直になんのシャルオム(交渉)もせずに支払ったらしい。なんなら、言い値よりも随分と多くを出したそうだ。

 出された金を受け取らないのはアーリブ(変わり者)だ。その金はありがたいことに、ヒブル・ターバル(渡りの仲間)シャーリク(取り分)になった。誰だってそうする。

 シャルオム(交渉)を知らないせいもあるだろうけど、それはきっとユーヤなりのエタッハー(申し訳なく思う気持ち)なんだろう。ターバル(渡り)を遅らせてしまったことへの。だったら余計、受け取るべきだ。

 ヒブ(仲間)の誰もがユーヤを構うのは、それでだ。シャルオム(交渉)がなかった分をこうやって埋め合わせている。金を出したジュナブ(外の人間)とはいえ、ヒブ(仲間)であることに変わりはない。具合が悪いならなおさらだ。

 ユーヤは戸惑ったような顔をして受け取る。受け取ったものをじっと見てから、片言のオージャ語でハリストゥ(ありがとう)と言う。それで、小さく笑う。それから、受け取ったシャーリク(取り分)シル(隣の女)に分け与える。

 ヒブ(仲間)の誰だって、ちゃんと二人分のシャーリク(取り分)を用意していた。みんなそんなにクヒル(ケチ)じゃない。慌ててシルの分も渡すと、ユーヤはもっと戸惑った顔をした。

 その様子を見てからは、みんな最初からユーヤに二人分のシャーリク(取り分)を渡すようになった。




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