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渡りの仲間(三)

 ジュナブ(外の人間)の二人が子供に見えるという話をダキオにしたら笑われた。ダキオには、俺もあの二人もさほど変わらないように見えるらしい。

 俺がダキオと一緒にターバル(渡り)をするようになったのは、もっと子供の頃だった。あの二人なんかよりずっと──なにせ、俺の中の一番古い記憶がダキオにファヤ・ビーダ(豆と卵)を食わせてもらった、その味だ。

 そりゃ、あれと比べたら随分と大人に見えるだろう。ムゼイ(気に喰わない)

 でもそうやって思い返して、指を弾いて数えてみれば、あのときのダキオは今の俺よりも子供だったってことになる。小さい小さい子供だった俺の目には、あのときのダキオはたいそう大きく、立派な大人に見えたけど。よく考えればそう、もしかしたら、ちょうどジュナブ(外の人間)の二人とたいして変わらないくらいだったんじゃないか、そんな気がした。




 タバル・アレム(砂の渡り)で急ぐやつはアバ(馬鹿)ヒブ(仲間)ハミヤ(大事)にしないやつはタフル・アバ(輪をかけた馬鹿)

 その言葉は、ダキオにファヤ・ビーダ(豆と卵)を食わせてもらったときに教わった。あの時の俺はダキオの声に返事をしただろうか。食うことばかりに夢中だったけど。でも、あのときのダキオの声ははっきりと覚えている。

 夜のラハル・マー(オアシス)のざわめき。暗い道端にたくさん揺れるジラル・アレム(砂影石)を通した灯り。その中でダキオは俺に「|ヴィディバ・シャルク・アーテ《これはおまえの分だ》」と言って、ファヤ・ビーダ(豆と卵)を食わせてくれた。

 スラク・ビーダ(茹で卵)を潰してスラク・ファヤ(柔らかく煮た豆)と混ぜて食べる。ほろほろと崩れる黄身がスダー(調味料)と一緒にファヤ()に絡んで、とにかく夢中で口に詰め込んでいた。

 あれからずっと、俺はダキオとタバル・アレム(砂の渡り)をして暮らしている。あれより前のことは覚えてない。理由も知らない。聞いたこともない。興味もない。





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