渡りの仲間(二)
とても目立つ二人組だった。特に女の方。髪も瞳も肌すらラマーの色合いで、ラハル・クビーラのように涼やかだ。言葉は通じない。ずっと男に手を引かれて、何かあっても隣の男としか話さない。名前を名乗るときすら、自分では何も言わずに隣の男が代わりに話していた。
シル、というのが名前らしい。あまりにラマーのようだったから、最初にジュナブが倒れたと聞いたときは女の方だろうと思ったくらいだった。
まあ、実際に倒れたのは男の方で、女の方は全くもって元気だった。なんなら、スラク・ビーダにたっぷりのナレ・スダーを絡めて口に目一杯詰め込んでいたくらいだ。ラマーを舐めて生きてるんじゃないかという見た目からは想像がつかない、気持ちの良い食べっぷりだった。隣では、倒れた男が小さな虫のように僅かな果物を口にしていた。
男の方はユーヤと名乗っていた。黒い髪と黒い瞳は珍しくもないけど、肌の色が全然違うからこの辺りのやつじゃないのはすぐにわかった。
喋れるらしいオージャの言葉も片言だった。ルキエーの装飾品を身に付けていたけど、そっちも片言だ。女と喋ってるときの言葉を聞いても、どこの言葉かわからなかった。
それに、男が喋ってる言葉と女が喋ってる言葉が同じように聞こえない。どうしても、それぞれが別の言葉を喋っているように聞こえる。それでいて通じ合っているようなので、お互いに何を話しているかはわかっているんだろうけど、奇妙な印象だった。
それと、そう、二人で揃いの石を首にぶら下げていた。オージャの──恋人の石だったか、と思い出す。オージャには行ったことがないけど、この石は何度か見たことがある。ルハル・マーに関わる石だと聞いた。
オージャのルハル・マーはタザーヘル・ガニュンのルーハとは別のものらしい。オージャにはオージャのルーハがいる。それが恋人の石と呼ばれるのは、オージャのストゥラーダによるものらしい。
恋人の石か、と思って二人を眺める。二人は全然似てないから血縁関係と言われる方が驚く。けど、恋人というのもなんだかちぐはぐな印象だ。
俺から見て、二人はもっと子供に見えたからだ。