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旅をする──ドラゴンの少女と巡る異世界  作者: くれは
第二章 二つの川の街
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■ フィウ・ド・チタ ガイド ■

【フィウ・ド・チタ】


 二つの川の街(フィウ・ド・チタ)は、涙の川(フィウ・メ・ラク)沿いにある大きな街。

 フィウ・メ・ラクを少し下れば港があり、フィウ・メ・ラクの上流はラク・メ・アニェーゼ(アニェーゼの涙)ラク・メ・アルミロ(アルミロの涙)という二本の川になる。その川沿いでは昔から交易が盛んで、それで大きくなった街だ。

 様々な地域からやってきた人たちが行き交う。


 乾燥した気候で、雨が少ない。

 雨が少ないことについては、古い民話でその理由が語られている。その民話が、川の名前の由来にもなっている、アニェーゼとアルミロの話だ。

 この話のために、この街を訪れる恋人たちは多い。




【アニェーゼとアルミロ】


 昔は、この地域にもよく雨が降っていた。雨は、雨の女神様に仕える精霊のアニェーゼがこの地に届けにきていた。

 アニェーゼはある時、この地の海沿いで、アルミロという人間の男を見付けてしまう。

 アルミロは、見目麗しい若者だった。アニェーゼは一目で恋に落ちた。そして、アルミロの前に姿を現してしまう。

 アルミロはアニェーゼの想いに応え、二人は海で二人きりで過ごす。


 アニェーゼは雨を届ける仕事を忘れてしまっていた。

 この地に暮らす人たちが、雨が降らないことに困って女神様に祈りを捧げる。雨が降らないのはどうしてでしょうか。わたしたちが何かしてしまったのでしょうか。

 そこで女神様はようやく、アニェーゼが仕事を怠っていること、その理由がアルミロという美しい若者であることを知った。


 怒った女神様は、アニェーゼとアルミロを海から離れた山の中に、別々に閉じ込めた。

 引き離されて、会えなくなったアニェーゼとアルミロは涙を流す。その涙が、それぞれ川になった。

 二人が流す涙の川は、それでもお互いに会いたくて、二人が出会ったあの海辺まで流れてゆく。そして二つの川は出会い、一つの流れになる。人々はその二つの流れをラク・メ・アニェーゼとラク・メ・アルミロと呼んだ。

 ラク・メ・アニェーゼの方が川が大きいのは、アニェーゼの雨の力も全て涙になってしまうからだと言われている。


 怒った女神様は、海の上に閉じこもってしまった。それからこの地域には、雨があまり降らなくなってしまった。

 雨が降る日は、女神様が気まぐれに二人に再会を許す日だと言われている。




 アニェーゼとアルミロの涙の川が出会う場所は、恋人たちのシンボルになっている。

 恋人たちは川を眺めながら、アニェーゼとアルミロのように、たとえ離れ離れになってしまってもお互いを思い合うと誓う。




【マトナ・メ・アメティ】


 マトナ・メ・アメティは、マトナという花の一種だ。

 花の色は涙の青。そして、一つの茎に二つの花が咲く。恋人の花として、フィウ・ド・チタでは人気の花だ。街のそこかしこに咲いているのを見ることができる。

 橋の上で愛を誓う恋人たちが、マトナ・メ・アメティを川に投げ入れたりもする。




【カルコ・メ・ラク】


 涙の石(カルコ・メ・ラク)は、恋人の石(カルコ・メ・アメティ)とも呼ばれる。

 合流する辺りの川辺を散策していれば、拾うこともできるかもしれない。


 黒くツヤツヤした石の中に、青い石が入り込んで青いラインとして表面に浮き出てくる。その青いラインは、川の流れのようだとも涙のようだとも、雨のようだとも言われている。


 この街では、カルコ・メ・ラクをペンダントやブローチなどの装飾品に加工して、恋人向けに二つセットで売っているのをよく見かける。

 恋人たちは、フィウ・メ・ラクに愛を誓った証として、その石を買って二人で一つずつ持つ。


明日から『第三章 女神の島々』が始まります。

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