素敵な刺繍の美しい花(二)
連れてきたルーを荷物ごとガニに置いてゆく。彼女が纏っていた大きな布を被せて、しばらくの間シュグイの振りをしてもらう。
彼女と二人でガニを出る。彼女が自分のルーを連れてくる。そのままルーに跨がろうとするので、慌てて彼女を抱えて俺のルーに乗った。シュグイはクーゲンが抱えていくものだと言えば、彼女は素直に帯で俺と彼女の体を結んで固定してから、きちんと俺の腕の中に収まった。俺のシュグイはしっかりしている。ツェッツェシグ。
彼女のルーもきっと彼女に似て賢い。飛び立てばちゃんと後をついてきた。
俺の逸る気持ちが伝わってしまうのか、ルーはリクトーに飛ぶ。その背中で、こうして腕の中にシュグイがいることを感じて、俺は何度もその髪に口付ける。彼女はその度にくすぐったそうに首をすくめた。
シュグイはもうクーゲンのものだ。もうじきネイのトウム・ウルに降り立つ。そこでクーゲンからシュグイに新しい名前を渡せば、もう。
シュグイの新しい名前はずっと考えていた。
今のツェッツェシグ・ウータという名前だって、ツェッツェシグな彼女に似合った、とても良い名前だ。けど、俺の気持ちにはちっとも足りない。
「クークスグ・クハトーザ・サーハン・ツェッツェ」
新しい名前を耳元で囁けば「ウラト」と睨まれる。それでも、こうして髪に口付けることは嫌がられなかった。
俺が考えた新しい名前はネイにも「ウラト」と言われた。彼女はクハトーザ・ツェッツェと呼ばれることになった。けど、これはこれで悪くない、と気付く。
シュグイを『クークスグ』『サーハン』と呼ぶのはクーゲンだけで良い。