花のような糸と勇ましい羽(四)
わたしは父に怒られた。ノース・クーケルーデの隣の男に近付きすぎだと言われた。オール・アキィトを見たかっただけなのだと言ったけれど、距離が近過ぎると言われた。もうケレトできる年なのだから気を付けなさい、と。
ノース・クーケルーデと話すことは、父も咎めなかった。だからわたしは、ノース・クーケルーデだけに話しかけた。隣の男は心配そうにずっとこちらの様子を伺っている。
この男はノース・クーケルーデのことを心配しすぎじゃないだろうか。それとも、クホスとはそういうものなのか。
それでも、今度は隣の男も口を出してこなかったので、わたしはノース・クーケルーデに自分の持っているいろんな綺麗なものを見せた。ノース・クーケルーデは綺麗なものが好きみたいだ。
髪はモーン・ウータ、瞳はノダー。そうだ、今度は白い布でノース・クーケルーデを作ろうと思いながら、目の前のノース・クーケルーデを見る。
そのうちに、ノース・クーケルーデはオール・アキィト以外にも、いろいろなものを見せてくれた。ノースのような青い線が入った黒い石の首飾り。それから、薄くて平ったい透き通るもの。
その薄くて平ったい透き通るものは、魚の体を覆っているものなのだという。魚というのは、水の中を飛ぶのだと聞いたことがある。体がこんな透き通ってきらきらとしたもので覆われているなんて、宝石のような生き物なんだろうか。
ノース・クーケルーデは、その薄くて平ったい透き通るものを一つ、わたしにくれた。
ノース・クーケルーデは、隣の男に大事にされている。あの隣の男は、ノース・クーケルーデにたくさんのものを与えている。わたしがクハトーザした布鞄も、買ってノース・クーケルーデに渡していた。
本当にクーケルーデのようにあまり笑わずにいたノース・クーケルーデだけど、隣の男がクハトーザの布鞄を渡すと、嬉しそうに笑ってそれを抱きしめていた。
それで、ノース・クーケルーデと隣の男は、行ってしまった。父は二人を送り届けて、いつもよりも遠い山に降りるので、戻りは遅いだろう。