花のような糸と勇ましい羽(一)
山に降りていた父が、何日かぶりに戻ってきた。
父がお客を連れて戻ってくることはよくある。いろんな人がトウム・ウルまでやってきて、織物だとか刺繍だとか、あるいは鳥の羽だとかウル・ヤークだとか、時にはルーだとかを選んで持ってゆく。代わりに、山で使えるお金だとか、山にしかない食べ物だとかをトウム・ウル・ネイは手に入れる。
それがソリトーというものだ。トウム・ウルの背中は広々として、空気も冷たくて、恐ろしいものもいないので過ごしやすいけれど、なんでも手に入るわけじゃない。だから、時々はこうやって山に降りていってソリトーをして必要なものを見付けてくる。
この世界ができたときから、トウム・ウル・ネイはそうやって生きてきたのだという。
けれど、その日訪れたお客は、少し様子が違った。
あとで聞いた話だけれど、そのお客の目的はソリトーではなく、クードゥルーだったらしい。遠くに行くために、トウム・ウルとルーの助けを必要としていた。父は山のお金を受け取って、彼らをトウム・ウルに招いた。
そして、何頭かのトウム・ウルを経由して、どこかに送り届けるのだと言った。
トウム・ウル・ネイはトウム・ウルの背中の上で、いつもクードゥルーしている。そして、トウム・ウルの調子が悪くなることがあれば、別のトウム・ウルにクードゥルーする。クードゥルーというのも、それと同じようなことらしい。