アニェーゼの涙とアルミロの涙
旅の話、なあ。なんでも良いって言われても……ああ、いや、大丈夫。宿のお礼みたいなものだ。子供が聞いて面白いものがあるかはわからないが。
そうだ、アニェーゼの涙とアルミロの涙の話をしよう。いやいや、フィウの話とは違う。これは俺が旅をする間にあったことだ。人に話すのも初めてだから、知らない話だろう。
イオージア・エナのラクからローモスが生まれた話は知っているか。そう、その話だ。
|ラク・メ・イオージア・エナ《女神様の涙》からはローモスが生まれた。ラク・メ・アニェーゼとラク・メ・アルミロからは、人の姿をしたものが生まれたんだ。きっとお互いを思い合う二人の気持ちが人の姿になったものだったんだろう。
ラク・メ・アニェーゼは、雨に紛れてラク・メ・アルミロに会いに行った。二人はお互いに出会って、でも生まれたばかりで何もできなくて困っていた。俺が二人を拾ったのはそんなときだった。
人の言葉もわからない、道に迷っている様子の二人を連れて、フィウを下ってフィウ・ド・チタまで旅をした。二人はお礼にと、俺に古金貨をくれたよ。
二人がどうなったかって? さあ、海の方に行くと言っていたから、きっと|ドーマ・メ・イオージア《女神様の家》まで行って、雨の一雫にでもなったんだろう。この間の久し振りの雨、あれは二人のおかげかもしれないな。
ん、ああ、古金貨か? もう売ってしまったから、見せられないな。嘘だろうって? いや、嘘じゃないさ。いやいや、本当にそんなティローディ・ドがいたんだよ。
ああ、ほら、呼ばれてる。話はここまでだ、寝ておいで。