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アニェーゼとアルミロ(六)
ユーヤとシルのことは、きっと人に話しても信じてもらえないだろうと思う。
古金貨も手放してしまったので、彼らと出会ったことを物語るものももう何もない。そういえば、古金貨を売ろうとしてちょっと大変な目にあった。どこで手に入れたのだとしつこく聞かれた。二人のことを説明できずに「フィウで拾った」と言ってしまった。
きっと今頃は、川で古金貨探しをしているだろう。川を探してもカルコ・メ・ラクくらいしか見つからないだろうが。
あの二人はもしかしたら、そう、お互いを思い合うアニェーゼとアルミロのラクから生まれたものではないだろうか。イオージア・エナのラクからローモスが生まれたように。生まれたばかりであれば、二人の無知も納得できる。
そうやって、流れ落ちたラクは川を下って海に出て、|ドーマ・メ・イオージア《女神様の家》でイオージアの一雫になるのかもしれない。
結局、彼らが何者だったのか、私はわからないままだ。でも、本当に精霊のようなものだったのかもしれないと、今でも時折思い返しては考えることがある。