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アニェーゼとアルミロ(四)
フィウ・ド・チタに旅をする間、ユーヤは言葉を知りたがった。不都合なくとまではいかなくても、ある程度の意思疎通ができるほどにはなった。理解も早い。新しく知った言葉をすぐに使おうとする。
シルの方は相変わらず、ぼんやりとユーヤの後をついていくだけだったけれど、ユーヤとは何かを話すようだった。私が話しかけても、ぼんやりとしたまま、そっとユーヤを見る。それで、ユーヤが代わりに話す。
シルはユーヤと離れるのを嫌がっていた。歩くときもユーヤの後をついてまわり、寝るときもユーヤに寄り添って眠る。
その姿は、恋人というよりも、親の後をついて歩く子供のようだ。親を失った子供達が寄り添っているようにも見える。
理由もなく言葉の通じない土地で慣れない旅などしないだろう。何も事情はわからないが。聞こうと思っても、言葉が通じないから聞くこともできない。