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アニェーゼとアルミロ(三)
初めて会った日の夜、ユーヤはとても大きな──広い範囲の細かな地図を見せてきた。海の向こう、タザーヘル・ガニュンやルキエー、それだけでなく、そのもっと向こうの名を知らない土地まで描かれた地図だ。
手に入れようと思って手に入れられるものではない。いや、古金貨を持っていたくらいだ。このくらい、ユーヤにとってはなんてことないのかもしれない。
強めに「見せるな」と言ったけれど、伝わったかどうか。
それでも、ユーヤは私の言葉を聞こうとしている様子だった。話す私の口元をじっと見て、聞き取り、聞き取れた単語を繰り返す。
ゆっくりと、簡単な単語で繰り返しているうちに、意味が伝わったらしい。辿々しい発音ではあったけれど、私の言葉を真似て、地図を指差して「私はこの場所に行く」と言う。
指差した先はニッシ・メ・ラーゴだった。これがフィウ・ド・チタであれば、やはり恋人か、駆け落ちでもしたのかと思うところだが、ニッシ・メ・ラーゴは特に何がある島でもない。
何をしに行くつもりだろうか。年頃の男女だからニッシ・メ・ラッチには行けないだろうが。