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旅をする──ドラゴンの少女と巡る異世界  作者: くれは
第十四章 巨人の湖
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■ トネム・シャビ ガイド ■

【トネム・シャビ】


 シャビマという国に、トネム・シャビという大きな湖がある。

 シャビというのは、シャビマの言葉で湖の意味だ。シャビマという国の名前自体が(シャビ)土地(マー)という意味で、大小様々な(シャビ)があることが由来になっている。その中でもひときわ大きいのがトネム・シャビだ。

 トネム・シャビのトネムというのは、この国にまだ(ミネ)が暮らしていなかった頃の昔、この土地にいたという巨人(ソヒミネ)の名前だ。


 昔この土地は、水のない真っ平らな土地だった。そこに三人の大きい(ソヒ)(ミネ)がいた。

 一番大きいのは一番目(エシム)、一番小さなのは三番目(ネクシム)、真ん中が二番目(トネム)という名前だった。

 ある時三人は椅子が欲しくなって、土を掘り返して積み上げて椅子を作った。

 一番大きな山がエシムの椅子(エシム・トウリ)、一番小さな山がネクシムの椅子(ネクシム・トウリ)、真ん中の山がトネムの椅子(トネム・トウリ)と呼ばれるのはそのためだ。

 なにせ巨人(ソヒミネ)だったので、椅子を作るのにもたくさんの土が必要だった。それで、土を掘り返した跡に水が溜まって、大きな湖がたくさんできた。水が集まるようになったので、たくさんの木が生えるようになった。

 たくさんの木が集まったので、たくさんの葉っぱが積もるようになった。それで巨人(ソヒミネ)たちは、落ち葉を搔き集めることにした。掻き集めた葉っぱはとても大きな塊になって、大きな魚の姿になって空を飛んで行ってしまった。

 一番大きなエシムは、その大きな魚を追いかけて行ってしまった。

 エシムがいなくなったことが悲しくて、残されたトネムとネクシムは落ち葉を作った木々を引っこ抜いてしまった。それで、葉の落ちない木ばかりが生える土地(マー)ができてしまった。

 ある時、雪がたくさん降り積もった。二人の巨人(ソヒミネ)はその雪を掻き集めることにした。掻き集めた雪は大きな塊になって、ドラゴンの姿になって空を飛んで行ってしまった。

 一番小さなネクシムは、そのドラゴンを追いかけて行ってしまった。

 エシムもネクシムもいなくなったことが悲しくて、トネムは一番大きな湖に身を投げてしまった。その時のトネムの姿が、トネム・シャビの形に残っているのだという。


 トネム・シャビの周囲の地名は、トネムの胸(トネム・タケハ)トネムの右手(トネム・イカシ)など、トネムの体にちなんだものが多い。




【ラウラウ】


 シャビマの湖でよく見かける黒い水鳥は、その名前をラウラウという。

 歌を(ラウ)歌う(ラウ)という名前の通り、とても綺麗な鳴き声で有名な鳥だ。ただ、その鳴き声を聞くことができるのは、雪の季節(タルミ・ウシ)が終わって太陽の季節(カサミ・ウシ)が始まる季節に限られる。

 雪解けの頃、美しい旋律を歌う声が湖から聞こえたら、それがラウラウだ。

 その歌声の美しさは、この土地に残る昔話にもよく登場する。どの話でも、美しい歌声を聞いても追いかけてはいけないと言われている。

 ラウラウの歌声に惑わされた男や子供が、下が湖と気付かずに雪の上に踏み入って、そのまま湖に沈んで戻れなくなるような話が、シャビマの各地に残っている。




【パッタ・タッシ】


 シャビマの多くの場所では、太陽の季節(カサミ・ウシ)の夜には街の広場などに集まって飲み食い、歌い踊る。

 朝から昼間は働き、夕方になると集まって歌い踊り、家に帰って眠るというのが、シャビマの一般的な太陽の季節(カサミ・ウシ)の過ごし方だ。雪の季節(タルミ・ウシ)にはどうしても家の中で静かに過ごすことになるので、その分のエネルギーを全部ここで使うかのように、太陽の季節(カサミ・ウシ)には活動的に過ごす。

 そこでよく踊られているのが、パッタ・タッシと呼ばれる踊りだ。

 跳ねる(パッタ)踊り(タッシ)という名前の通り、踊り手は音楽が鳴っている間、ほとんどずっと跳ねていることになる。ずっと踊り続けるにはとても激しい踊りだが、広場で踊るときには疲れたら少し離れて休むことができるので、気楽に自由に楽しまれている。

 太陽の季節(カサミ・ウシ)踊り(タッシ)は、若い男女にとっては出会いの場でもある。パッタ・タッシを二人で踊る場合、向かい合って両手を繋ぎ合って跳ね回ることになる。その息が合わなければ、そもそも一緒に踊ることもできない。

 相性の良い二人であれば、ずっと二人で回り続けることもできると言われている。息の合った二人の踊りは、周囲も大いに盛り上がる。


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