聖騎士の誕生②
いよいよ生徒の測定は最後の四人になった。クラスでは何時も本を読んでいるが、先ほどの四人の様な騒ぐタイプのオタクではなく、自己主張の弱い、ともすれば自身の殻に閉じ籠るタイプのオタクである「影山 栄治」、彼の能力は「影使い」であったが文字列が5行と他の生徒に比べて圧倒的に少なく、その部分を早速ガラの悪い鬼人にからかわれていた。
「おい、エージ、お前は陰気臭いイメージ通りに、影使いなんだって?しかも、強度を示す行数は五行!ギャハハハハ!俺達の3分の一じゃねェか!ザッコ!俺の足を引っ張るのだけは止めてくれよな!」
「ッ………!」
そう吐き捨てるように栄治に告げると鬼人は修学旅行時に組んでいた自分の班員の元へ戻る。その後、彼の班からもけたたましい笑い声が響く。栄治はさらに暗い雰囲気を出し、さらに兵士にもぞんざいに扱われ、4バカはこれが落ち着いたら励ましに行こうと決める。
「ハァ……凄かったのは威勢の良い連中だけか。次。」
「あっ……あの………ああ……」
「何だね?早く触れたまえ。」
どもりながらおそるおそる石板に触れるのは「堂森 硬留」。彼が石板から浮かび上がらせた文字は「念話」しかしその下に続く文字列は6行と少なく、周囲の兵士を落胆させる。
「念話ですか………珍しいですが、強度が高ければ伝令役にもなるでしょうが……」
そう歯切れ悪く告げる兵士、硬留は終始何か言い掛けては辞めて、おろおろしていた。
「次の方、どうぞ」
「へへへへ私はここできっと運命の出会いがあるんだわきっとよ今まで大きな顔をしてたあいつらが羨ましがる凄い人を捕まえてみせるんだから」
物凄い早口でブツブツと喋っていた金髪でハーフの彼女「ヘラ ドメーン」が石板に手を置く。浮かび上がったのは「ナイフ使い」であった。しかし、文字列で表される強度は7。決してズバ抜けて強力な物では無かった。
「なによなによなによ、あいつらの時と輝きが違うじゃない!勝手に呼びつけておいてこの世界も私を拒絶するのね。ホント許せない許せない」
「文句を言ってはダメです。守護神への侮辱ですよ。さあ次の方の為に避けて下さい。」
ヘラはブツブツと早口で文句を言いながらも、兵士に押し退けられる。
「貴方が最後ですね。さぁ手を」
最後に「洞蕗 次狼」が何処か飄々とした態度で石板に触れる。浮かび上がったのは「扇動」の文字、すると彼に声を掛ける生徒がいた。
「おいおいおい!この俺っちと同じ能力とか、あり得なくない?テメーの嘘つきが移ったらどうするんだよ?」
そう言って威圧してきたのは「場宮起 流星」。いかにもパリピ的な彼も「扇動」の力を得ており、既に兵士と打ち解け自分の能力は混乱を招くのではなく、聖騎士の活動を広く認知させる為だと「扇動」の売り込みを掛けていた男である。
「ハッ!お前みたいなキョロ充と同じ能力なんてな!こっちこそ願い下げだ!俺の言葉は国なんてチンケなスケールじゃない!この大陸、いやこの異世界を震撼させるんだからな!」
「ハイハイでたでた、狼少年ジロー君のビッグマウス。でもな聖騎士って言われる俺達に広報役は二人も要らないの。わかる?ここはもう学校じゃないんだしさっさとどっかに消えて欲しいな。まあ?何もしなくても強度3の時点でクソザコナメクジだからいっか。」
「君、止めなさい。コイツをどうするかは我々が話し合う。さあ行った行った。」
次狼は石板から離れて柱の影に逃げる
なんだよキョロ充の癖に!しかも俺より高い強度16の「扇動」だって?バカ騒ぎするだけの奴がなんだってあんなに石板を光らせられるんだよ!それに俺の事をまた狼少年だって言いやがった。学校じゃないからどっかに行けとも、待てよ?ここが現代じゃないならアイツを排除しても良いんじゃないか。アイツから排除しようとしてきたんだ。見返してやるぞ………
そう思った次狼は大神殿の片隅でニヤニヤと笑い出すのだった。
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