バカは召喚されても治らない
その後も勇吾や賢二に続いてチャラチャラした不良の「不和 鬼人」も石板を触り新たな力に一喜一憂していた。
「ハッハー!「鬼化」なんて実に俺らしいじゃねぇか!ブドウだかキドウだか知らねぇがぶちのめしてやるよぉ!」
しかも鬼人は文字列が17行輝き、勇吾に一歩及ばなかった事を悔しがりつつも18行が最大だと考えれば十分な力であり、しぶしぶながら次に譲る。そして何人もが“力”を授かり、石板の文字列もほぼ全員が15~17列輝き、平均以上の力を示していた。
そしてついに自分の番が来たと胡乱な頭で考えている男が一人。その名は「大波 来人」バスの中でゲームをしていた彼はうっすら車酔いしている頭で必死に考えていた
やだなぁ。いくら異世界っても最近のなろう系ならツエー出来るけど、少し昔の90年代00年代の異世界モノとか近所の古本屋で読んだけど割りとハードでバッドなの多いんだよなぁスマホやゲームが無いのしんどいし、PS5をプレイするまで死ねないのにイケメンどもはお姫様に乗せられてるし、女子も最初に出てきた王子に釘付けだしロクな事にならなそうだなぁ。というか帰れるかどうかの説め………
「次の方、石板に触れて下さい。」
そう促され来人は石板に触れる。すると石板に文字が浮かび上がり、その下によく分からない文字列が羅列される。
「貴方は……石使いですか。文字列は……9行、半分ですか。この世界の人からすれば多めですが、特筆する程の事は無さそうですね。次。」
その言葉を聞いて来人は安心していた。
はーやったぁ、中の上ぐらいが一番良いよね。祭りあげられるのはゴメンだよ。
どうせ目立てば回りを固められるし帰らせてくれないかも知れないし、かといって低すぎれば追放とかされそうだし、なんか兵士の皆さんからブラックな雰囲気感じるしなぁ即戦力以外お呼びじゃないんだろうなぁ
「次の方、石板に触れて下さい」
そう来人の次に呼ばれた男「大西 翔」は先ほどの来人と同様に心の中で頭を抱える。
俺は異世界派じゃなくてSF派なんだよなぁ。もちろん異世界モノが嫌いって訳じゃなくて好みの問題なんだけど、この大神殿って遺跡も超古代文明の遺産で異世界召喚とかは次元に穴を開けるワープ装置とか……いやいや、現実逃避は良くないだろうけど、しなきゃやってられないよ。
まだ組んで無いプラモが有るんだよ!サフだけして放置してるのも有るし、これから発売するキットもまだまだ組みたい奴も一杯有るし!絶対に生き残りたい!生き残りたい!ただ生きてたくなってるんだよチキショウめ!
そう思いながら石板に触れた翔は浮かび上がった文字を確認する。
「魔物使い……か」
「貴方は魔物使いですか。文字列は……また9行、パッとしませんね。次」
はー安心したぜ。これは御輿ルートも追放ルートも回避出来たか?!俺も来人と同じでその手の作品には触れてるが、そう言う話は読むに限ると思っているからなぁ。
みろよ前の奴の顔、峠は越えたって顔をしてやがる。まぁ俺もそんな顔をしてるんだろうな。兵士や王子サマに見られない様にしなきゃな。
「次の方、触れて下さい」
次に呼ばれた「日向 昇」は周囲の兵士に気を配りながらも石板に手を伸ばす。
あーあいつら、うまくやりやがったな。こんなの公開処刑と変わらないやんけ!王国の思い通りなら祭りあげるんだろうけど、物々しい雰囲気から察するに期待はずれだと……って感じだな。
最初に我らがクラスのイケメンを兵士が取り押さえた時妙に手慣れてる感じだしな。適度に役に立つ演出をして無難にやり過ごしたいなぁ。
あいつらも考えてるだろうけど、早く帰る手段を探さなければ、まだ読んでないマンガが沢山あるんだよ!○○先生の作品とか△△先生の作品とななぁ!あの物語やあのストーリーを見届けるまでは死んでも死にきれないッ!。
そうだよ。勇気とガッツで乗りきらなければ!俺達までこんなバカな事に最後まで付き合う必要は無いよな!
「貴方は……「相互理解」?見た事がありませんね。姫様!」
兵士は勇吾と話していた姫を、判断を扇ぐ為に呼ぶ。
(ヤバイヤバイヤバイヤバイユニークスキルとか?マジでゴメンなんだけどぉぉ)
「確かに見た事が有りませんね。字面から見るに言葉が通じない相手でも話の内容がお互いに理解出来る様なモノでしょうか?しかし、文字列は10行で強度は並み。危険とされる心を読むたぐいでも無さそうですし、通訳位にしか使えませんね。」
『災難だったなぁボウズ。あぁ、驚かずに聞いてくれ。返事もしなくて良い。俺は大神殿、大神殿そのものの意識みたいなモンだと思ってくれ。見た所、前に触った二人もボウズの友達に見える。落ち着いたら必ず話し掛けてくれ。助けになってやる。』
ビックゥッ!と昇は反応するがすんでの所で声を出すのを我慢した。
「あら?どうかしたのかしら?」
「いえ、その、姫様があんまり美人なので」
「そう」
ユニークスキルかと思えば、通訳ぐらいしか使い道がないと分かると、彼にたいして目に見えて興味を無くした姫は、ササッと勇吾のもとへ戻る。その背中を見ながら昇は先ほどの渋いイケボをセリフを反芻していた。
相互理解が意思のあるモノなら何でも会話出来るのか?確かに姫の言ってる様な心を読むって感じはしないが、あの声は一体……いやここで考えても仕方ない。
その内自由時間が出来たらあいつらとあの声と相談しよう。
「次の方、どうぞ」
えーマジどうしよ三バカは皆揃って強度が並みじゃん。良いなーほら私ってフィリップ様に守護られたい系の女子だし強い力を手に入れたら前線に立たないとかもだし!しかもここさっきから試してるけどスマホの電波入らないじゃないの!フィリップ様の新エピのアプデとか新スキンの課金とかどうやれば……ハッ!そもそもゲームが起動出来ないぃぃぃぃぃ!あんのクソ王国!私とフィリップ様を引き裂くなん……いや、フィリップ様とジョシュア様の様子をスマホから見守れなくするなんて!なんて!なんて!邪悪な王国なのよ!ガドウとか言ってる魔物に攻められてるとか、いっそ滅べば良いのだわ!あのボラコ王子もイケメンだけど、私のタイプじゃないし!一刻も早く現世に戻って周回しなきゃギルメンにも迷惑掛けるし!「故戦場」から逃げるななんて言われちゃうぅぅ!
そんな事をぐるぐる考えながら「紅蘭 歩」は石板に触れる。
「貴女は、「魔法使い」ですか。これも突出した部分が無い上に、能力の補正も広く浅く、文字列は10行、イマイチですね。次」
はー勝手に呼び出して?スマホ取り上げて?強制ソシャゲ断ちされて?でたセリフがイマイチ?OK気に入った。魔物じゃなくアタシが潰してやんよこの王国ゥ……
この四人、
大浪 来人(だいなみ くると)
能力 石使い
大西 翔(おおにし かける)
能力 魔物使い
日向 昇(ひゅうが のぼる)
能力 相互理解
紅蘭 歩(くらん あゆむ)
能力 魔法使い
この四人こそが、この物語の主人公であり、これから語るのがこの4バカのマイソロジーである。
やっと主人公登場!
帰って遊びたい系の彼らと彼女の4バカの痛快娯楽異世界脱出劇、頑張りますので☆が欲しいです(激ウマギャグ)