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ショートストーリー タバコ買いに行くと

作者: 夢前孝行

私は現役時代タバコを吸っていた。

三十歳の後半にM販売に入社したのだがそれまでタバコを吸っていなかった。

入社すると先輩達に馬鹿にされていた。

趣味もないし酒を飲むわけでもない勿論タバコは吸わないから馬鹿扱いされていたのだ。

小説や詩を書いているなんて言えなかった。

そこでタバコくらい吸わなければとタバコを吸い始めたのだけれど、

それがやみつきになってタバコが止められなくなった。

現役時代二度禁煙に挑戦していた。

一度は椎間板ヘルニアで二十日ほど入院したときと正月に風邪を引き医者に行けず、

風邪はタバコを受け付けなかったし吸う気になれなかった。

やむを得ずタバコを止めた。

すると風邪も治り始めてそれ以降タバコを止めていたが又いつのまにか吸うようになっていた。


そんなある日会社の近くのたばこ屋に行くといつもおっちゃんが自動販売機にタバコを詰めていた。

そのおっちゃんこの頃余り見かけないがどうしたんやと聞く。

実は禁煙してますねんと言うとおっちゃん喜んで、そらええこっちゃあんたは偉いと持ち上げてくれた。

自分ところのお客が一人減るのだが快く喜んでくれた。


それから三ヶ月ほど禁煙していた。

ところがある日同僚にタバコを一本もらって吸うと凄く気持ちよかった。

まるで痲薬を吸っているみたいだ。

頭がくらくらして体が浮いたようになる。

それがやみつきになって又タバコを吸い始めた。

タバコを吸い始めると禁煙していて最初に吸った一本の味なんかなくなってしまう。


そして又たばこ屋へ行くようになった。

タバコを買いに行くと例のおっちゃんがいた。

おっちゃんタバコ売ってくれるかと言うと、おっちゃん何を思ったのか

「あんたなんかにタバコよう売らん。禁煙した言うてたんと違うんか。見損なった」

険もほろろに断られた。

私としては又タバコを買いに来るようになっておっちゃんにも会えると喜んでいたのにこのサマだ。

参ったな! 喜んでもらえると思ったのに反対に叱られタバコも売ってくれなかった。

おっちゃんの処はタバコ売ってなんぼやないか、それなのにタバコ買いに行って売ってくれへんとはどう言うことや。

私はおっちゃんに怒られてすごすごと引き返すより仕方なかった。


あのおっちゃん変わっとると思ったもんや。

もう二十年も前の話やが。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ストーリーは心が暖まる感じで好きです。 こういう世話好きなキャラはいいですね。 [気になる点]  なかなか具体的に表現できませんが、文章に凹凸みたいな引っ掛かりを感じました。  多分です…
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