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93.夜の代償
星は姿を消し
月は頬をゆがめ
道は道ではなく
ふくろうはわたしを追い立てる
ここにはわたしの味方はいない
ここにはわたしの味方はいない
「お前のせいで夜は夜ではなくなった」
狩人はわたしの瞳を一つ射抜いた
「こんなものは代償にもならない」
狩人はわたしの瞳をもう一つ射抜いた
とうに靴は奪われていた
とうに服は奪われていた
とうにわたしにはわたししか残されていなかった
「お前の怠慢が諸悪の根源だ」
狩人はわたしに犬をけしかけた
「お前の存在さえなければよかったんだ」
犬はわたしに飛び掛かった
狩人は去った
ふくろうが一声鳴いた
どこにも道はない
星も月も、もう見えない
けれど犬はわたしを責めなかった
押し倒された胸の上
心地いい重みと温かさに
わたしは初めて罪を知った
夜は夜だからこそよかったんだ、と




