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90.この愛を確認するための布石
僕の代わりに君が怒ってくれたから
何度も何度も怒ってくれたから
僕の中のいら立ちが収まっていって
溜飲が下がって
しまいには君を抱きしめていた
それでも怒り続ける君のことが
愛おしくて
笑ってしまいそうなほど愛おしくて
今日の出来事はこの愛を確認するための布石
そう思ったほどだった
そうだね
僕の代わりに怒ってくれる人なんて
君しかいなかったんだ
僕を見つめてくれる人なんて
君しかいなかったんだ
理不尽な現実
避けがたい未来
矛盾ばかりの理屈
猫なで声をあげた口に――牙
でも
現実はただの現実
未来は時の流れの先にあるもの
概念に絶対的なものなどない
牙をむく奴は猫じゃない、狼だ
今日の出来事はこの世界を理解するための試練
今日の出来事はこの愛を確認するための布石




