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84.朝六時、君に会いに行く
きれいにトーストを焼けたから
半熟の目玉焼きを作れたから
トマトをくし切りにできたから
君に会いに行きたくなった
まだ朝の六時だけど
おろしたてのカーディガンを羽織って
洗いたてのスニーカーを履いて
君に会いに行きたくなった
キンモクセイの香りを連れて
甘い愛の言葉を唱えて
まだ触れたことのない唇を求めて
君に会いに行きたい
まだ朝の六時だけど
はちきれんばかりの愛を抱えて
伝えきれていない言葉を抱えて
君に会いに行きたい
今すぐ会いたい
たまらなく君に会いたい
もう我慢なんてしない
我慢なんてできやしない――
また新しい一日が始まる
重苦しいだけの一日が始まる
誰とも気軽に会えない毎日
どこにも気軽に行けない毎日
だけど君に会えたなら
今日は素晴らしいものになる
今日も明日も、ずっとずっと




