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81.どんな月でも、月は月
『雲一つない空
燦然と輝く月よりも
くすんだような雲の中に
おぼろに浮かぶ月が好きなの』
つぶやく君は悲し気で
泣きそうなのに泣けずにいた
君を覆う雲になりたくなった
どうしようもなく心惹かれた
それはとある秋の一夜のこと
『昔は今よりも月と
地球との距離が近かったんだって
もっともっと月が
大きく見えたんだって』
夜空を見上げる憂う背中
シャツからのぞくむき出しの肩
壊れそうで痛々しかった
苦しいほどに愛が膨らんだ
それはとある秋の一夜のこと
僕はどんな月でもいい
どんな月でも、月は月で
どんな君でも、君は君だ
中秋の名月ということで。




