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63.Regret
誰も教えてくれなかった
一度でもあなたの手を離してしまうと
二度と触れられなくなるということを
どれほど後悔しても
辛くても
苦しくても
望んでも
二度と触れられなくなるということを
あの頃のわたしは幼かった
愚かだった
運命というものを信じていた
たとえ一度手放しても
あなたと結ばれることができると
盲目的に信じていた
そういうものだと思っていた
あなた以外の男の手に
たまらなく触れてしまいたくなったあの日
我慢しきれず飛び出してしまったあの日――
わたしはもっとも大切なものを失った
誰も教えてくれなかった
一度でもあなたの手を離してしまうと
二度と触れられなくなるということを
どれほど後悔しても
辛くても
苦しくても
望んでも
二度と触れられなくなるということを




