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58.闇の落とし子
わたしの目に映るものは
なにもなかった
少なくとも
自我が芽生えて以来
わたしの目に映るものは
なにもなかった
夢の世界は多彩だったから
昼と夜が反転しているのだと
信じていた
もしくは
この目は何も感知できない不良品だと
決めつけていた
なのにある日
光を掴んだ
盲目だと信じていたこの目に
差し込むような眩しさを感じた
その瞬間
わたしは恐れた
世界が間違っていないのだとしたら
わたしが間違っていたことになる
世界が正常だとしたら
わたしが異常だったことになる
わたしにとって
光とは罰だった
わたしにとって
闇とは安寧だった




