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5.今朝はとても寒かったんです
今朝はとても寒かったんです
四月だというのに吐く息が白かったんです
私の部屋を訪れた君が開口一番そんなことを言うからむっとした
なんだっていきなり十二時間前のことを聞かされなくちゃならないの
なんだって君は今について語らないの
今日はずっと寒かったんですよ
天気予報士の言う通りダウンコートを着て正解でした
いつまでも過去を反すうし楽しむ君が冷たい人に思えた
ここにいる私を徹底的に無視するの
二人の間に他人の存在を交えても平気なの
今日はとても寒かったんです
だからあなたに早く会いたかったんです
――あなたに会いたくてたまらなかったんです
最初からそう言えばよかったんだ