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46.人間のように笑わないで
どうやら君は正しかったらしい
三年前の六月
小雨が木々の葉を濡らす十五時過ぎ
カフェテリアの隅で
人間のように笑わないでって
君は僕にそう言ったね
聞き間違いではなかった
君はもう一度繰り返した
人間のように笑わないでって
それから君は立ち上がると
僕の前から去っていった
同じ季節を三回繰り返したところで
ようやく分かったみたいだ
僕は人間ではないのだと
悲しみを消化できないと
泣きたくなるよりも先に笑いたくなる
そんな時こそ綺麗な笑みを浮かべてしまう
そんな僕を見る君の目は、次第に
異質なものへの生理的嫌悪に彩られていった
あの日、本当は
僕だって泣きたかったさ
人間らしく泣きたかったさ




