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39.ガラス玉
ガラス玉に閉じ込めた記憶は
どれもが美しいわけではなくて
目をそむけたくなるほど
醜いものもあるわけで
時折床に叩きつけたくなります
過去のすべてを破壊したくなります
木っ端みじんになればいい
そう思うことがあります
でも それでは駄目なのです
過去は今の一部で
未来の根本だから
どれほど苦くても汚くても
重くても
うっとおしくても
そのおぞましい糧がなくては
私もあなたも生きてはいない
だから私たちは
無数のガラス玉を胸に抱えて
ひたすら歩くしかないのです
――せめて一緒に行きましょうか




