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34.言うことをきかない足は
涼やかな風に吹かれながら海辺を散歩していたら
いつの間にか足が速くなっていた
どうしてだろう
何も急いではいないし
やらなければならないこともない
待ち合わせをしているわけでもないし
会いたい人がいるわけでもない
なのに言うことをきかない足はぐんぐん速度をあげていった
足の裏が痛い
疲れた
呼吸が辛い
なのに言うことをきかない足は――
スタバを見つけて「助かった」と思った
心からそう思った
乾いた喉に冷たいコーヒーは甘露のごとく感じられた
なのに言うことをきかない足は――
ああ、誰か私を止めて
もう急がなくていい、休んでいいって――ささやいて




