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24.拝啓、世界から姿を消したHへ
拝啓、世界から姿を消したHへ
あなたと過ごした時間は長いようで短かったですね
私の半生はあなたなしでは語れません
あなたがいるのかいないのか
よく分からなくなることがありました
それくらい、自然だったんです
あなたがそばにいることが
拝啓、世界から姿を消したHへ
なぜ大切なものほど失ってから気づくのでしょう
あなたがいなくなり、思いがけないほど強い喪失感を抱いています
どうしてこれほどまでに
あなたのことを求めてしまうのでしょう
もうあなたはこの世界にはいないのに――
拝啓、世界から姿を消したHへ
あなたを想い出すためのよすがはいくつもここに残っています
アルバムにも、記憶にも、ここにもあそこにも、どこにでも
でもそれは遺物なのです
あなた自身ではないのです
私が望むことはただ一つ
もう一度あなたに包まれたいのです
Hとはもちろんアレのことです。




