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16.さようならは言わないでほしかった
さようならと言って去っていった君のことが憎い。
さようならなんて言わずに、突然いなくなればよかったんだ。
そしたら僕はこう考えることができたんだ。
君は急用でどこかに行ってしまって、そこで怪我して動けなくなっているんだって。
もしくはどこかの国の王子様に攫われて、どこかの国で幸せに暮らしているんだって。
もしくは宇宙人がやってきて「一緒に宇宙旅行しましょうよ」と誘われたんだ。
さようならと言って去ったから、君は僕のもとには二度と戻るつもりがないのだと分かってしまった。
どこでどう暮らしていようといい。
どうか――幸せに。