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15.鼓動
この体を切り開いて内臓を見せることができないように、
私の心を君に見せることはできないんだ。
だから理解されなくたってちっともかまわない。
ううん――理解する必要なんてない。
そう言って君のことを傷つけたあの日は間違っていたのだと、ようやく気づいた。
たとえこの目で見られなくたって確かにあるものを、
なぜ見ることができないという事実だけで曖昧なものに貶めることができたのだろう。
目を閉じれば心臓の音が聴こえる。
とくとくと無駄な生を刻みつづけている心臓の音が。
放っておいてよ――そう言って突き放したあの日のことが忘れられない。
ああもう、鼓動がうるさくて仕方がない。
この傷も罪も後悔も、一生背負って生きていく。
鼓動がそれを告げてくる。




