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10.未完のノンフィクション
適当に生きているつもりはないのだけれど、何もかも適当に済ませてしまいたくなってはや半年がたつ。
少しでも楽に呼吸をしたくて、この身を締め付けるもの何もかもを引きはがし、投げ捨て、それでようやく冬を越せた。
それがどうしたことか。
たかが春の訪れに、暖かな陽気に、きちんと身なりを整えたくなった。
明るい色のパンツに柔らかな素材のシャツを。
スニーカーではなくてパンプスを。
耳元にはアシンメトリーなピンクゴールドのピアスを。
唇には艶のあるリキッドルージュを。
この変化は喜ばしいことなのだろうか、それとも悪しきことなのだろうか――。
分からないながらも着飾って家を飛び出した四月十六日はもうすぐ終わろうとしている。
結末はいつ教えてもらえるのだろう。
いつか、誰かに教えてもらいたい。




