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1.桜散る日に
淡い春色の花びらが散っていく様を見るのが辛いです。
毎年のことですが、ひそかに胸を締め付けられています。
欠落していく花びらは、かなわなかった願いの数だけあるそうです。
桜の木の下には死体が埋まっている、そう言ったのは誰でしょうか。
ええ――願いというものは、その時その人がそこにいた証ですから。
心臓にぴたりとはまっていたものだからこそ、失う時は実に哀しい。
血と涙が入り混じっているからこそ、桜はあんな色になるのです。
そのことを知らない人が多すぎる。
実に多すぎる……。
淡い春色の花びらが散っていく様を見るのが辛いです。
今年はあのどれかひとひらに、あなたへの恋心も混ぜました。
どうかお願いします。
もしもそれを見つけても、そのまま散るに任せてください。
地に落ち、踏みしめられ、
無数の花びら同士で傷をなめ合うように重なり合って。
やがて、段々と、腐っていけばいいのです。
こちらは香月よう子様の活動報告での自主企画、「桜」をお題にして参加したものを改稿したものです。