アラフォーですがオタクなんです。
かなり既出な設定ですが楽しんで頂ければ嬉しいです。
桜の花がヒラヒラと散る日本の美しい春。
真新しい制服に身を包んで眩しい笑顔を見せる学生達。
キラキラしたこの季節が私には非常に疎ましい。
疎ましい、って言うよりなんかこう虚脱感みたいな物を感じる。
所謂これが木の芽時って奴か。
なんせ私は若年性更年期障害が始まってもおかしくない年齢だ。
もう一度言う、あくまで若年性だ。
容姿普通、頭普通、性格はまぁアレな感じだけど友達にだ
けは何故か恵まれてる。
そしてこの歳まで独身なのはきっと重度のオタクのせいだ。
中学の時に同人にハマり、いつか冷めるだろう、そのうち現実の男にも興味が出るだろうと思った私は浅はかでしたスミマセン。
過去の私に教えてやりたい。
オマエ、コスプレしてる暇があるなら現実見ろよ!とな。
だけどやっぱり愛してきたオタク生活を無かった事になんて出来ない!
私は乙女ゲームの画面を見つめながら、
クッ!と歯軋りした。
「チッ、このルートどうやったら行けるのさ!」
チートして攻略サイト見るか!?
イヤイヤ、それはイカン。
自力で彼らを征服してこそ萌えも倍増するのだ。
何度も繰り返してお目当てのキャラを攻略しようとしてたら、気が付いたら1日だけの休みはもう終わりかけていた。
アラフォーのおばさんが必死にイケメンキャラを攻略しようとしているこの後ろ姿は誰かが見たらどう思うだろうか。
イタイ事この上ないだろう。
だが私はめげない!
例え親に泣いて見合いをしろと迫られようが、
高校生の息子を持つ同級生に可哀想なものを見る目で見られようがどーって事はない!
私には萌えを提供してくれる二次元の彼らがいるのだ。
ずっとキュンキュンしていられるお陰で出産した同級生には絶対勝っている女性ホルモンの分泌!
私の方が老けてない。
顔が普通なのが残念だが。
どうせなら凄い美人に生まれたかったなぁ。
逆ハーレム作れるくらいモテてみたい。
ねぇ、そう思うでしょ?
はぁ憧れるー。
とそこまで妄想が暴走していた時ふいに腹の虫が鳴った。
「あーお腹空いたー」
突如襲ってきた空腹感に面倒くさいけど何か食べるかと冷蔵庫に向かう。
「なんもねぇ...」
そう、食べるよりアニメやゲームや漫画読んでた方が幸せな私は買い物なんか殆ど行かないのだった。
でもお腹はグルグルとバカみたいに鳴る。
仕方なく、自宅の前の道の向かい側にあるコンビニに行こうと思い立った。
頭からパーカーのフードを被り、ポケットに手を突っ込んで一応左右確認して車道を渡ろうとした私は浅はかでした。
なんであとちょっと先の信号まで歩かなかったかな!
キキーーーッ‼︎
最後に見えたのは車のヘッドライトらしき強い光とブレーキ音。
不思議と痛みは無くて、意識が消えてく中で私はふと思った。
まぁこんな人生も案外悪くなかった。
生まれ変わってもオタクなのかなー。
お母ちゃんごめんね、孫産んであげられなくて。
とかね。
ほんと末期...。
そこで意識は途切れた。