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微笑
風が強く吹いた。
「あなた、何してるの?」
「え?あ、写真撮影をしてるんです。」
反射的にこたえてしまい、ぎょっとして声の聞こえた方向に顔を向けた。
瞬間どくりと心臓が脈打つ。
あぜ道の先、ほんの二三歩前にいたのは、長い黒髪の女の子だった。
いつからそこに居たんだ?
淡いブルーのワイシャツに紺のスカート。
背は俺より少し低く見えるけど・・・まさか同い年か?
顔をよく見ようとして目が合った。
明るい茶色の瞳。
その子は微笑んで言った。
「ここを撮ってるってことは、あなた、帰省してきた人なのかしら?それとも中小鹿中の・・・写真部員?」
「え?中小鹿中??ええと、俺は帰省してきた人だけど。写真を撮ってるのは、ちょっとした宿題みたいなもん・・・です。」
「それは面白い宿題ね。私もやりたかったわ。」
その子はまた微笑んだ。
季節外れの桜色の頬、きゅっと細められた二つの目、透き通った明るい声。
・・・ただその子の笑顔は、何かを懐かしむように揺らいでいるように見えた。