あぜ道にて
青くあおく、どこまでも輝き続ける空。旋回するトンビ。
風に揺れる緑の稲は、モンゴルの大草原のようだ。
「やっぱすげえ・・・。」
つぶやくと、立て続けに二枚写真を撮った。
お、影もついてないし、結構良くないかこれ?
そんなことを思いながらあぜ道を歩いていると、後ろから声がかかった。
「おーい優希!おじいちゃんが、裏の畑に行くからついてこないか。だって!」
この声は泰希。あのブラック兄貴め、今朝俺にやった事を忘れて声をかけるか。・・・絶対行かねえ。あいつと一緒に行動してたまるか。
「いや、俺はこっちで写真撮ってるからいい!」
振り向かずに応える。正直、じいちゃんが野菜を収穫している姿は撮りたい。しかしまあ・・・まあ、いい。
「なんだ!おじいちゃんの写真撮らないのか!?」
「行かないつってんだろ!!」
思わず振り向いて叫んでしまう。すると、あぜ道に続く道路の前で泰希が笑って手を振っていた。
さあっと顔が熱くなる。
これじゃあ俺が駄々をこねてるみたいじゃないか。
泰希に背を向ける。
一歩踏み出すとカエルが跳びだしてきた。
後ろではまだ何か言っているが、気にしたら負けだ。
整備されたあぜ道を歩き続ける。
だんだんと泰希の声が遠くなっていく。
ゆっくりと、跳ね上がっていた気持ちが落ち着いていくのがわかった。
冷静に考えればこれは俺が悪いな。謝った方がいいか。
そう思い、立ち止まってそっと後ろに目を向けると、遠くに泰希の背中が見えた。
なんだ、あっさり帰りやがって。
泰希から目をそらし、首を動かしてあたりを見回す。
あーもう、何を撮ろうか。