第三話「課題」
なんと一か月半振りの更新です。
やる気あるのかコイツ・・・。
目が覚めると、部屋はいつもと変りない空気に戻っていた。
だが、目の前の景色は何か違うような・・・。
「・・・と。・・・いと・・・」
んん?なんて言ってるんだ・・・。
「雷都‼早く起きろ‼」
「うわあぁ‼」
「やっと起きた・・・。全く・・・訓練で疲れすぎじゃないのか?」
ああ、灯茂か・・・。
・・・。
「・・・おやすみ」
「おい⁉二度寝⁉起きろォ‼」
* * *
「で、一時間も遅れてきたわけ?」
「しょうがねぇだろ‼コイツ全く起きようとしないんだから‼」
「誕生日会するってこと忘れてたんだよ・・・。悪かったって」
「雷都さんは最近、物忘れが多いですね」
ううっ、確かに・・・。話題を変えなきゃ・・・。
「そ、それはそうと!誕生日会って僕の部屋でやる予定じゃなかったの?」
「いやぁ、そのつもりだったんだけどね?私、サプライズがしたかったから」
「だけど昨日は失敗したし、今日は折角の休日だろ?だから部屋で祝うより、雷都が行きたがってた、あの場所に行こうと思ってな!」
二人は楽しそうに顔を合わせて笑っている。ちょっと不安なんだけど・・・。
「それってもしかして・・・?」
「「もちろん‼」」
「宝石の生る大樹です‼」
「ええ⁉でもあそこは立ち入り禁止じゃ」
「ほら、行くよ‼」
「まずはイズエフ山道まで転送屋で送ってもらうぞ~」
「「おー‼」」
ふ、不安だ・・・。
* * *
─四時間後─ イズエフ山付近
「ねぇ~まだぁ~?」
音を上げた声は瑠美から聞こえた。
「もうちょっと頑張れよ・・・雷都を祝うためだろ」
と、言いつつ灯茂は座り込んだままだった。
「あの・・・もしかして、これって・・・」
滝は恐る恐る核心に迫ろうとしていた。
「ああ、もしかしなくてもそうだね・・・」
「迷子・・・だね」
風も吹かない見知らぬ山中で、僕の声は透き通るように響いた。
「どうなってんだ!瑠美!この地図まちがってんじゃねぇのか!あぁ⁉」
「は⁉私のせい⁉あんたが方向音痴だから悪いんでしょ‼」
「何をォ⁉」
「何よ⁉」
「ちょっと!二人とも!協力しなきゃいけない時に喧嘩してどうするのさ!」
僕の声を聞き入れた二人は少し冷静さを取り戻した。
「とりあえず場所は把握しなきゃ、ですね」
「そうだな・・・何か目印になるものは・・・」
ガサッ・・・
「ヒッ‼」
「な、なんですか?」
「そ、そこの茂みに何か・・・いる」
「え⁉何かってなんだよ・・・?」
ガサッ・・・ガサッ・・・
「わ、分からないけど、近づいてきてる‼」
ガサガサガサガサ‼
「みんなかたまって!」
四人で集まって防御態勢を作る。
毎日、厳しい訓練を受けているんだ。宝石の能力がなくても野生の魔物ぐらいなら・・・。
さぁ、来い‼
「にゃぁ」
にゃ・・・?
「ね、猫?」
「なんだよ、猫かよ・・・」
猫だったのか・・・よかった・・・
が、安心したのも束の間だった。
猫は近づいてきて、前足を指した。
なんだ、そっちに何か・・・
・・・貼り紙・・・か?
『※立ち入り禁止※ この一帯、地下水の影響により、地盤沈下の危険があります』
「⁉みんな、早く逃げ」
ドーンッ‼
「「「「うわあああああああああああああ‼」」」」
* * *
雫が額に落ちた。絶え間なく間隔を空けて落ち続けている。
なんでここにいるんだっけ・・・そもそもここは・・・。
「・・・目覚めなさい」
嫌だよ・・・こんなに体が怠いし・・・。
足に至ってはもう感覚があまり無かった。
「回復したら起きるのですね・・・?」
ああ、そうだよ。だから今は・・・
「なら回復してあげましょう」
・・・え?何言って・・・
僕の周りを白い光が包む。みるみる気怠さが取れて、足の感覚も元に戻ってきた。
「ほら、あなたはもう回復しました。目覚めない」
・・・仕方ない。
「・・・ありがとうございま・・・?」
お礼を言おうとしたが、そこには誰も居なく、ただ岩壁が無表情に僕を見ているだけだった。
「そちらではありません。後ろです」
振り返った。その瞬間────
僕はまた倒れた。今度は体が気怠いからじゃない。そこに広がっていたのは厳選に厳選を重ねて作り出されたような彩りを放つ、眩い宝石の数々だった。
それだけじゃない。
驚きなのはそれが樹に生っている、ということだ。
その樹の前に若干透けて、まるでホログラムで具現されたような金髪碧眼長身の美女が佇んでいた。
僕はこれまでに体験したことのない衝撃で、倒れこんだ。
「も、もしかしてあなたが・・・」
「宝石の生る大樹なんですか⁉」
「私の事を知っているとは・・・それなりに学はあるようですね」
やっぱり・・・これが・・・
「・・・あ!」
「どうしたのですか?」
「あ、あの!ここに落ちてきた僕以外の三人は・・・」
「あの方たちはあなたのご友人ですか・・・。ここには来ていません。落ちる前に私の従者が助けたようです」
良かった・・・でも
「・・・なら、なぜ僕は落ちてきたんですか?」
「それは・・・」
それは・・・?
「わかりません」
・・・え?
「私の従者は玉者です。宝石の能力によって、あなた方を助けようとしたのですが、一人だけ能力が通らなかった・・・そう言っていました」
僕にだけ、能力が通らない・・・?
「まぁ、とりあえず生きていてよかったです。500mほど未防備な状態で落ちてきて、足の骨折だけとは運がいいですね」
「ご、ごひゃっ⁉」
そんな高さから落ちてきたのか・・・。き、奇跡・・・?
「で、なぜこの時期にお一人で?卒業生が来るにはまだ早いと思いますが・・・」
大樹様は不思議そうに尋ねた。
「ぼ、僕は立派な強い玉者になりたくて、それで・・・一度、大樹様に会いたくて・・・」
大樹様は無表情にこっちを見て答えた。
「・・・それだけですか?」
「え・・・」
凄く冷たい矢が刺さった。
「あなたのように立派になりたいだの、強くなりたいだの、そう言った独りよがりの理由で玉者になる人を私はたくさん見てきました。そういった人に限って玉砕者に寝返るのです」
「そ、そんなつもりは‼」
遮るように大樹様は続ける。
「口だけなら何とでも言えます」
「・・・」
何も言い返せなった。確かに僕は強くなりたい、立派になりたいとばかり考えてきた。それは孤独から解放されるためだ。これ以上、悲しさを抱えたくないからだ。とても独りよがりで自分勝手な理由だ・・・。
「ですが」
大樹様は続けた。
「私は若い芽を開花する前に摘むような趣味はありません。悪しき花なら咲いた後でも摘めます」
「じゃ、じゃあ‼」
「しかし、あなたを認めたわけではありません。大体、冬眠中の私に会いに来ることさえ、重罪なんですからね」
「うう・・・すみません・・・」
「そこであなたには課題を与えます。あなたは今年度の卒業生ですよね?」
「はい、そうですけど・・・」
「それでは期間を卒業までの三か月間とします。課題内容は首席で卒業することと、私が納得する玉者になりたい理由を考えることです。分かりましたか?」
主席と理由か・・・。前者はともかく・・・。
「理由ですか・・・」
「はい、これが私からあなたへの課題です」
中々この人も厳しいな・・・鉄室教官には適わないけど。
「分かりました。頑張ってみます」
ゴーン・・・ゴーン・・・
僕の返事と同時に遠くから鐘の音が聞こえた。
「この音は・・・?」
「日付が変わる時に鳴る号鐘ですね」
もうそんな時間か・・・え⁉
「消灯時間⁉早く帰らなきゃ・・・」
「早くって・・・あなた方、アヨガンの寮から来たのでしょう?転送屋で付近まで来たのでしょうけど、深夜まで転送屋はやってませんよ?」
な、なんだって・・・?徒歩で帰ったら三日はかかるぞ・・・。
「ど、どうしたら・・・」
「全く・・・仕方のない方たちですね・・・。今回だけですよ」
大樹様が左手を翳した。
「え、な、何を」
「課題」
「え?」
「しっかりこなしてくださいね?」
目の前が白い光に包まれた。
そこで僕の意識は途切れた。
* * *
「・・・と。・・・いと・・・」
んん?なんかこの感じ、前にも・・・。
「雷都‼」
「うわあぁ‼」
「おっ、今度は二度寝しないですね」
「ここは・・・?」
「寮の前だよ」
「落ちたお前を探してたら、突然目の前が真っ白になって」
「気づいたらここまで戻ってきてたです」
大樹様のおかげ・・・なのかな?
「とりあえず早く入ろうぜ。消灯までもう五分もねぇよ」
「えっ・・・?」
ちょっと待て、僕が光を浴びた時は既に・・・。
「なにボーっとしてるのよ?早く行かなきゃ!」
「え、ちょ、待ってよ!」
大樹様に会ったのは夢だったのか・・・?
よく分からない。でも会ってたとしても、そうでなくても一つだけ確かなことがある。
課題。あれをクリアしなきゃ。
大樹様に認められる為じゃなく、自分の為に、だ。
卒業まであと三か月間・・・やれることをやってみよう。
決意を新たにして、僕はみんなと別れ、自分の部屋に向かった。
まだ用語についての解説が曖昧なので意味わかんないですね・・・
次話で説明しますのでよろしくおねがいしますm(_ _"m)