こころをひとつに
子供ってつまらないな。少年は思った。
大人は子供と違って何でもできるのに、いろいろ理由をつけてやろうとしない。挙句の果てに大人同士でけんかしたりする。
「みんながこころをひとつにすれば、この世界はもっと楽しくなるだろうに」
「それは本当かい?」
少年が、不意に聞こえた声の主を探すために視線を動かすと、そこには小さくて黒い姿の翼を生やした悪魔がいた。
「もし君がそれを望むのなら、私が叶えて差し上げましょう」
「そう、ならお願い」
少年はぶっきらぼうな声で悪魔に願う。
「かしこまりました」
悪魔は返事をすると、ヤツは黒い光るもやのようなものをだして、僕の視界は何も見えなくなった。
「いったいここはどこなんだ。あの悪魔、なにをしたんだ」
少年の体は、まるで宙に浮いているかのような状態で、周りには無数の人間の視界を移した画面のようなものが浮いている。
そして、様々な人間の声が重なり内容はわからないが、絶え間なく聞こえる。
「君の願いを叶えただけだよ。全人類の心をひとつにしたのさ。少し時間がたてば静かになる」
しばらくすると静かになった。不思議と頭が冴え渡るような感じもする。
「周りの声がきこえなくなったがいったいなにがおきたんだ?」
「消えたのさ。人間の精神で耐えれるわけ無いからね。でも問題ない、君だけは私の力で守られてる。そして体もあるし考えることもできる」
「君の中に意識以外は全部あると思ってくれてかまわないよ」
悪魔は少年に答えると飛び去っていった。
全人類をひとつにか、たしかにこれはいい。
考えるだけで答えがすぐに浮かんでくる。
気になっていた漫画や小説の続きもまるで実際に見ているかのような再現度で思い出せる。難しかった問題も、なぜあの人がそんなことを言ったのかってことも全部わかった。
「これはすごいな。なんでもできるみたいだ」
だが少年は考える。全人類の頭で考える。
今の自分たちに限界ってあるのだろうかと。
答えはすぐに出た。さすがは全人類の頭脳だ。
限界はあったのだ。
「人間ってつまらないな」
最後の少年は意識を手放す。
そして人類は滅亡した。